*short*

□人工知能『to-bi-o. 』
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※とびおちゃんが国見の携帯電話です。
※人工知能的な何か。
※それでもいい人はどうぞ。










チュンチュンと、可愛らしげに小鳥が窓のそとで鳴いている。
カーテンを割って入ってくるのは暖かな日差し。
それを受けながら少年、国見はベッド上でもぞりとうごめくと、二度寝をしようと再び布団を頭から大きく被った。

しかし、そこで部屋に響く小さな電子音がそれを許さない。



『おはようくにみ。朝だぞ。』

「.......」

『おい。聞いてんのか。』

「..........」

『くーにーみー!!!!!』

「........」

『むぅ......もうしらん。』

「............」










ジリリリリリリリリリッ!!!!!


突如けたたましく鳴り響いたサイレン。

国見はうだりながら布団からしぶしぶ起きあがると、寝癖で跳ねまくっている頭をかきながら水色の端末を手にした。

「トビオ。
いつもうるさいっていってること、何でするわけ?
早くとめてよね。」

『なんで怒ってんだよ。くにみがアラームを7時にセットすんのがわりぃだろ。』

何こいつ、くそ生意気。

プクリと膨らむ頬をタッチしてスライドすれば、面白いくらいにトビオの顔面の皮が伸びた。
いたい!はなせ!と片言でしゃべってくるものだから可笑しくて、それに免じて許してやることにする。

「おはよう。」

あらためて言い直せば、
おう。と嬉しそうに画面のなかで頷き、下手くそにはにかむトビオの姿。

前言撤回。なにこれくそ可愛い。










国見英の携帯は他のものが持つ端末とは少し違っている。
と、いうのも、彼の父の親戚が電気会社で齷齪働いているからであって。

昔から新作のゲームやら、カセットやらを誕生日プレゼント変わりに譲ってもらったりしていたものだ。

そして今回。

特別に実験という名のついでもかねて、まだ開発途中の人工知能が彼の携帯へとお邪魔した。

ちょっと改造するだけだから。

そういいながら笑って携帯をひったくっていった親戚の顔に心底不安になったのはいうまでもないだろう。

人工知能『to_bi_o.』。

国見を通して、余計なエラーが出なければ発売を前提に話を持ち込もうと考えているそうだ。

つまり、自分の携帯はかなり危険な状態にあると知らされたも同然で、最初国見は見てわかるほどに機嫌が悪かった。

悪かったのだが。

いざ、端末を起動してみると、その意見は180度、一変にして変わった。

まず、国見は起動をして始めに写った『to_bi_o. 』という青いスクリーンの文字に目を奪われる。
おお、本格的。と感動していれば、
ふと、画面が真っ暗になった。

もう故障か?と不安になって画面を叩いたりしながらみていれば、その暗闇からふわりと水色の滴をかたどった模様が落ちてきたのだ。

それはそのまま流れるように画面の下部へと当たって弾けると、べちゃりと絵の具の水色をぶちまけたようなかたまりをつくる。

大きく画面を埋め尽くす水溜まり。

その空間からにょきりと右腕が登場したのは、それからすぐのことであった。

これにはさすがの彼も驚いて、
思わず目を大きく見開く。

紅葉のような小さい手。

本物の人間と大差があまりない。

これが初お披露目か、と、気長に見守ってやろうと時間をあけるが、三分が経過しても、なかなか残りのパーツが姿を現すことがなかった。

よくみると、わたわたと蠢く手は明らかに焦っている様子を醸し出している。


__もしかして、何かに突っかかってるのか....?


どうしたものかと、頬をかきながら彼を救う方法を考えてやる。

ぶっちゃけ、電子の中で起きている問題など彼では解きようも無いのだが、それは別として。

うー、と唸りながら画面を試しにタップしてみれば、自分の触れた部分が僅かに青く点滅して、消えた。




.......これってもしかして_____。




ためしにもう一度画面をタップして、小さな手の延びる位置に光の玉を差し出してみれば、
案の定、彼はいそいそと国見の指を掴んできた。

そのままスライドして水溜まりから引き抜いてやると、随分と整った顔立ちがようやく顔を除かせる。

黒い艶やかな髪。
耳には青いピアスをはめており、キラキラ光を放っている。
手先まですっぽりおおっているのは暖かそうな紺色のカーディガン。
手首にはワンポイントかなにかで、スカイブルーのシュシュが巻かれていた。

そして、おおきな青みがかった瞳。長いまつげ。人間離れした美貌。
(もともと人間ではないが、人間のようにリアルであったのは確かだ。)
それで男型だと親戚はいいはるものだから、なにかそちらの趣味があるのかと疑いざるを得なかった。

『to_bi_o 』はまごうことなき、顔の整いすぎた美少年であったのである。


『___あ』

「??」


『す、すいません!!!
なかなかデータが多かったものだからここまで来るのに時間、かかっちまいまして___』


おいおい、随分と敬語が苦手な人工知能だな。
ふん、鼻をならせば、彼はぱっぱっと服の埃を払って頭を下げた。



『to-bi-o.正常に起動完了致しました。

今日から、世話、なります。』



こうして、トビオという名の人工知能は国見英との出会いを果たしたのだ。
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