*short*

□心のブレーキがききません。
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※がっつりR-18ですので、観覧は自己責任でよろしくお願いいたします。
※及川さんが(かなり)鬼畜。
※それでもいいかたは、どうぞ↓




















「....う.......


この、__くっそっ....!!」




朝。暖まった布団からごそりと身を起こすと、ひんやりと冷たい空気が優しくほほを撫でる。

はみ出した丸い頭は窓からのぞく日光を反射して、綺麗なエンジェルリングを作り出していた。

爽やかな朝だ。
こんな休日は決まって、彼はランニングをするため家をでる。

しかし、その冷たい風を心地よく感じるより先に影山はズキズキと不自然に痛みを帯びる腰を擦った。

ぐぐぐと前屈をするようにベッドへと体を近付けると、恨めしげにその名前をつぶやいてからぼそぼそ文句を連ねる。

「あの人...っまた散々やってくれやがって.....」

体の節々の倦怠感をなんとかやり過ごしながらボサボサの寝癖がついた頭を掻き回す。
そうこうしているうちにも、
昨日の非常に許しがたい出来事が彼の脳内をゆうゆうと我が物顔で支配してくるからたまったものではない。


あの人。


影山にとっては、尊敬する先輩でもあり、また、倒すべき最大の敵でもあり、
そして愛すべき恋人でもある。

その名も及川徹。

しかし、ここ最近の及川は酷い(元々特別いい性格は持ち合わせていなかったが)。

しかもその『酷い行い』というものは、思いがまだ通じあっていなかったときの罵倒や暴言など可愛いものではなくて、おもに性行為内で行われていたから酷く厄介だ。

例えば昨晩の出来事。

今日、家に家族いなくて明日休みなんです。だから泊まりにきてください。

と、影山が伝えてやれば及川は有無も言わさずな迅速な速さで彼の家へと飛び込んで来た。
もちろん、影山はそんなつもりで言ったわけでは無いのだが及川はどうやらそういったお誘いが目当てだと勘違いをしてしまったようだ。
これは、自分が悪かったと影山は後々気がつくことになるが、それはさておき。

問題は、押し倒されてから。
そのあとだ。

一言で言えば、
何度も本気で泣かされ、何度も恥辱を味わわされ、
もう虐めのなにものでもないだろうといった現状であった。

そういったことは今までに何度かあったのだが、今回はそれがずば抜けて酷い。


例えば、影山が絶頂を迎えようと体を震わせれば、彼はそこから動くのをやめて快感を与える部位の刺激を避けたり、結合部以外での接触も突然止め始めて、酷く彼を混乱させたのだ。
もうすぐでいけるのに、いけないといったもどかしさから、みっともなくぐずってしまったのを今でも覚えている。
涙で辺りがよくわからなくなった時に、及川はようやくあはは、ごめんとへらへら笑いながら射精を促してくれた。

さらに、それから彼は、射精後の軽い倦怠感につつまれ意識が飛びかけた影山を、痛いくらいに
乱暴に揺すったのだ。
これには目を閉じようとぐったりしていた彼も、腹部の圧迫が強まり苦しくなって、勢いよく跳ね起きた。
肩をがむしゃらにつかんで、イったばかりだからまだまってくれと伝えても聞く耳持たず。
結局は散々好き勝手に喘がされたまま気を失って、
今に至る。





「最悪.......。」

及川との性行為は嫌いではないと影山ははっきりと断言はできる。
何だかんだで体の相性はいい。

しかし、いかんせん。
それがバレーの支障になるということであれば話は別なのだ。


___.....とりあえず服を着るか。


ない頭をひねるより、まずは肌寒くなってきた身に何かをまとわなければと影山はひょいと布団を足でどけた。

重たい腰を震わせながら立ち上がろうとした拍子。

ドロリとしたなにかが彼の白雪のような股をつたって流れ落ちていく。そのぞくぞくとした感覚に影山はぶるりと身を震わせた。

__おいまさかうそだろ....?

何事もなかったかのようにもう一度ベッドへと腰かけると、恐る恐る自分の後ろの穴へと手を当ててみる。

予想は悪い意味で的中した。

それは案の定白く、テラテラとした光沢を放って、影山の指先を伝う。


「っ...入れっぱなしかよ.......!!!」

これにはさすがに、もともと広くない彼の心は怒りの沸点をこえた。

むんずと布団を力任せに剥ぎ取ると、ふらつく体もそのままにずかずかと足を大幅に浴室へと向かう。

しばらくはラインも無視だ。
電話だってとってやらない。
自分との性行為が大好きな及川に禁欲と告げて、焦る姿を嘲笑ってやるのもいい。

さまざまな悪巧みが脳を横切り始める。
それに薄気味悪い笑みを浮かべながら、影山はばん、と洗面台へと続く扉を開け放った。
そして唖然とする。


そこには朝から人の家のシャワーを陣取る及川の姿があったのだ。



そういえば帰る姿を確認していなかったと、影山は今更ながら気が付いた。
これは酷い失態であった。
うう、とうなだれる影山に、及川は誰もがいらっとする満面の笑みで振りかえる。

「あ、トビオちゃーん
おはようっ

ちょっとシャワー、貸してもらった______から.....___」

なにが貸してもらったから。
だ、この野郎。

途中で自分を見て酷く驚いたように目を見開いたのだが、そんなことは今の影山にとってはどうでもよかった。
染み付いた上下関係から、決してそのようなことは口が裂けても言えないのだが、心のなかで散々に悪態をつく。

そうでもしなければ、やっていられない。

「おはようございます及川さん。
そこどいてくれませんかね。」

いつもより乱暴な口調になっていることに気が付いたのか、及川の表情が明らかに一変した。しかし、影山は特に気にするようすも見せずその横を通りすぎる。
そもそも怒っているのはこちらの方なのだ。
そう思えば、もう気を使う必要性などどこにも転がってはいなかった。

「ちょっと待て、飛雄。」

しかし、及川という青年はとことん空気が読めないらしい。
明らかに不機嫌オーラを振り撒く影山を、こうも容易く引き留めてしまうのだから。

これには勿論彼は鬼も逃げてしまうような顔つきで及川の顔を睨んでやった。
そこに先輩という尊重の念は決して混ざってはいない。

「なんすか。」

淡々と一言はいてやれば、
あー。と動揺した及川の声が脳まで響く。
がしがしと何かを考えながら頭をかくその姿が非常に苛立ち、影山は一気に捲し立てた。

「だから、なんなんすかって聞いてるんすけど。
さっさとしてくれませんかね。」

「お前ねぇ。今日なんでそんな不機嫌____


___.....いや、うん。


......じゃあ先に謝っとく。

ごめん飛雄。」

「....は?」

突然の謝罪に思わずたじろぐ。

なんの風の拭き回しか。
今日は晴天が嵐にでもかわるのだろうか?

影山が訳もわからず考えていると、突如及川が着かけていたはずのTシャツを脱ぎ出した。

「え、え?
及川さん....?」


明らかに様子がおかしい。
そしてとてつもなく嫌な予感が彼の脳を駆け巡った。

もういちどはくりと唇を動かして、及川さん。と呼ぶも、その行動の意味を聞くより早く、呼ばれた張本人は次の行動を写す。

逆らえない圧力で影山を浴室へと押し込むと、後ろ手で扉をゆっくり閉めていく。
その一動作一動作がいちいちスローモーションに見えて、思わず影山は身構えた。
まるでバレーを始める時と同じような緊張感である。

そんな怯えたような彼の顔を、
ようやく澄んだブラウンの瞳に写し混むと、及川は再び鬱蒼と微笑んだ。
それはまるで飢えた獣の目のようであった。

まずい。いまの及川さんはまずい。

喉奥でく、と唾を飲み込むと、影山はあの、と小さく言葉を溢す。
とりあえず逃げろ。
どこへでもいい。

自分に強く言い聞かせたが、もう狼と化した男を前に、逃げるのには遅かった。遅すぎた。

「あのさートビオちゃん。
お前が鈍いのは及川さんもよーく知ってる。

でもさ。
恋人の前で全裸でさ、
しかも、ここから及川さんのやつ、垂れ流しながら現れるなんて、
ちょっと警戒心が無さすぎるんじゃないの?」

浴室の狭い空間に及川の切羽詰まった低い声だけが響き渡る。
あまりの迫力に床にしりもちをついた影山を
及川はじりじりと壁際へ追い詰めた。

ここ、と言うときにするりと後ろの孔を撫でられ、つられるようにして彼の華奢な肩がびくりと跳ねる。

それに気をよくした意地の悪い男は、ひゅう、と軽く口笛を吹くと続けざまに、ちゅ、と広い額に口付けを落とした。

「飛雄はもっとさ。
男がどういうもんか、知ったがいいと思うんだよね。及川さんは。」

と、いうわけで、俺も男なんで。





そう言いながら迫ってくる影に逆らう術は

もうなかった。
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