*short*

□横取り恋慕。@
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*及川が兄、影山が弟のパラレルもんです。
にいちゃん影山徹くんです。
*月影←及です。(若干、及→←影
描写もあり)
*リクエストのA(R-18)へ続きます。
アンハッピーものですので、お気をつけください。

リクエストありがとうございました!




よろしいかたはスクロールどうぞ。↓























影山飛雄には兄がいる。

容姿端麗、頭脳明晰、品行方正、才色兼備。
どこをとっても、何においても完璧と評価される自慢の兄。
影山徹。

いつもその大きな背中を見て、弟の飛雄は誇らしげに育ってきた。
彼はいつも自分を家で待ってくれる兄が大好きであった。

外で散々に遊び散らかして帰ったときの、おかえり。と自分の頭を撫でる手のひらの大きさ。
自分より少し低い心地よい声。
そして微笑む顔。

参観日、母の代わりに兄がくれば、クラスの誰もがざわざわと騒ぎ立てたものだ。
あの人はどこからきたのだ。だの、
本当に人間なのか。だの、
平凡なものから突拍子な疑問まで。

なんせ、兄の容姿はそこらのイケメンと訳が違う。
飛雄は鼻高々に後ろを見つめる同級生へと見せつけるように手を降ったのをよく覚えている。

そんな弟にたいして、
これまた影山徹は優しかった。
それはもう度をこえる程の愛しっぷりであった。

幼稚園のお遊戯会、運動会。
繰り上がって、小学校の体育祭、文化祭、個人面談にまで同行するほどに彼は自分の弟の回りの世話を甲斐甲斐しく見たものだ。
両親は仲良しねぇと微笑んでいたが、一歩間違えれば重度のブラコンぶりである。
しかし、それはお互いの思いがぶつかり合うことで抹消していた。

このような関係が何時までも続くものだと信じてやまなかった。



しかし、現実はそうもうまく進んでいくものでは無かったのだと知らされたのは、
飛雄が中学2年、徹が高校へ入りたての時期の出来事であった。

突然、あれだけ弟を追いかけてやまなかった徹が、全く彼に干渉しなくなっていたのだ。
その理由を飛雄は薄々気がついていた。

理由は他でもない。
彼らが没頭するバレーにある。

徹を追い続けてきた飛雄は、いつも気持ち良さそうに、そして家でも滅多に見ることのできない輝く笑顔でバレーをする兄を見てきていた。
そして、その姿に自分もなりたい。
とも、願っていたのだ。

案の定、彼はバレーボール部に入部する。

しかし、生まれながらの天性と言うのか。
飛雄はみるみる間に実力をつけると、既にレギュラーとしてコートへと君臨するようになっていたのだ。

そして、ポジションはセッター。
徹と同じ
である。

彼を追って、北川第一まで受験を受けて、バレーを始めて、新たな仲間ができて。

これまでにないくらい毎日が充実していた。
本当に楽しかったと今でも思えるくらいには。


誰にも負けない、頼れる兄のような強く逞しい存在になりたい、と、切実に願った飛雄は、
その尊敬する兄へと何の悪意なしにサーブのコツを聞こうと歩み寄った。

そこで、とうとう我慢の限界と言いたげな徹がこちらに敵意を向けたのだ。


『もーさ、我慢ならない。
お前ムカつく。
飛雄さぁ、たまには俺の真似以外に何かできないの。』





持っていたボールは音をたてて体育館の床を力なく転がっていく。

ぱちりと大きく一度瞬きをすれば、何の感情もよみとれない徹の
鋭い目と目が合った。


______ああ。そうか。



思わず大きなため息が口をつく。
遅かった。
気がつくのが遅すぎたのだ。

一目見てそう思えるほどにその表情は冷たかった。

ようやく知ることができた。
そして絶句した。

もう兄の心に、自分に対する暖かな気持ちなど、これっぽっちも無くなっていたという事実に。







それからというもの、飛雄は彼に話しかけることを、やめた。






その日からまた数年が経ち、徹は青葉城西高校へ進学。
そして、素直な性格から一変。『コート上の王様』と呼ばれた飛雄が兄と全く違う学校、
烏野高校へ進学したのは、
そう遠くない未来であった。
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