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「そろそろ下ろせ。
さすがにこのまま店に入るのは気まずい。」
「うぃ。もう大丈夫そうだな。」
「ん。」
すとん、と地面に足を下ろせば、じゃりと踏みつけられた砂が音をたてる。
久しぶりに歩いたように足がきしんで、影山は思わず苦笑を漏らした。
最近は、この足につく筋肉もご無沙汰気味である。
「んー、少し遅くなっちまったかな?
怒られなきゃいいけど.....」
「??
菅原さんって人なら怖くねーだろ。
優しそうだし。」
うつむきながら唸る日向へ一言かけてやるとなんとも言えない微妙な視線が影山をつきさした。
なんだ、何が言いたい。
「はぁー。
俺もそう言ってた時代があったなぁ」
「なんだオメー。じじぃみたいなこと突然言いやがって。」
「え!!?俺じじいにみえんの!!?」
「話が噛み合ってねぇ。
いいから早く開けろばか。」
ぱしんと背中を叩けば、ようやく重たい腕が動き出す。
がらがらと立て付けの悪い勝手口が開いたときだ。
「翔陽!!翔陽おおおぉぉおっ!!!」
「うおっ!!?
なんすか!!なんなんすか!!?」
だだだと厨房を駆け回る西谷。
そのこぼれ落ちそうなほど大きな瞳はガラス玉のように輝いている。
それを見て何かを察したのだろう。
日向の目も突如、光を受けて光だした。
「西谷先輩!
も、もしかして!」
「もしかしなくてもその通り!!!!」
「「旭さん達が帰ってきた!!!!!」」
わっほーいと言いながら部屋を飛び出していく日向を、影山は唖然と見送る。
どうすればわからず、玄関で一人立ち尽くしていれば、
ほら、お前も。と、西谷に腕を引かれていった。
「お前運いいなー!!
調度入店当初に店長お目にかかれるなんてよ!!!
いっつも貴重な団子粉もらいに遠出して、なかなかかえってこないんだからなー!!
はーやっべー興奮してきたっ」
「は、はぁ。」
「あ、
旭さーん!!!澤村てんちょー!!!
コイツッス!!!
新人の影山ー!!」
突然の西谷の大声が耳に響き渡り、影山は思わずびくりと首をすくませる。
それに気づいてか、その声を出した張本人は、わりわりと恥ずかしそうに頬をかいていた。