とある屋敷
□斎沖小話詰め
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『もういい。もう、いらない』
沖田は、斎藤に向かって己の刀を投げつけた。
「っ、総司!」
「早く行きなよ」
冷たくそう告げれば、沖田は身を翻した。もう刀も持てやしない。戦うことなんて論外だ。
もう君の姿を僕に見せないで。
君の隣で戦っていたあの頃を思い出してしまう。お願いだから、もう。
「忘れさせて」
斎藤は己に投げつけられた刀をただ抱え込む。
あんたはもう、ここには来れないのか。あんたはもう二度と、俺の隣で、笑わないのか。
ならばこの命、惜しくなど無い。あんたのいない世界に、意味はない。
「もういい。もう、いらない」
それが彼にとってどれだけ残酷な言葉か知っていても。