FlOWER

□時を越えて君に巡り逢う
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「───…では、行ってきます。」

「気をつけるんだよ、ミサ。賑やかなところだからこそ危険も潜んでいるからね。」

「お気遣いありがとうございます神父様……では、」

「うむ、いってらっしゃい。気をつけて」

まるで娘のように私の安否を心配して下さる神父様ににっこりと微笑んでから教会を後にした──。








今日も七つの大罪を探して近辺へ赴く。

──あれから10年が経つ。

けれど今だに彼ら七人は一人も見つからず、噂を聞いてその地へ向かえば既に消息不明。

一向に足取りが掴めないでいる。

…………一体どこにいるの、皆…
早く会いたいよ、私の良き同胞よ。















「────…ここがバイゼル…」

山の斜面にへばりついている商人の町といわれている『バイゼル』。

今日は年に一度の古物市祭りをやるという噂を聞いてやって来た。

…こんなにたくさんの人で賑わうならば何か手がかりになりそうな情報が手に入りそうね…。

少しでも有力な情報を手に入れなきゃ……よしっ。











「──ヒック!…ちょいと、そこの美しいお嬢さん」

びくり。

しばらくザワザワと人混みが絶えないバイゼルを探索していると、突然酔っぱらったようなしゃがれた声がかけられ、ぴたりと進む足を止めた。

意を決してくるりと振り返った先には、樽に座って酒をぐびぐひと飲み、顔を赤く染めた一人の老人がいた。

「………。私、ですか?」

酔った勢いで声をかけたのではないかと疑いつつ再度問うと、ぷはあとビンから口を離した老人が口を開いた。

「そーうじゃ、ング…あんたの他におらんじゃろう…ヒック!美しいお嬢さんとやらわ…ック…」

──なんなの…このお酒臭いおじいさんは……真っ昼間からはしたないわ。

「…さてさて。お嬢さん一人でこんなところまで来て何か探し物かね?んン?」

「…い、いえ。なんでもないのです。たまたまこの町近くを通りかかったもので……」

…お酒臭いっ…!というか、ものすごく近いんだけど…!?

「そうかそうか〜ック!………そーういえば。…っあんたが来るほんのちょいと前にも、ヒック、…探しものをしていた連中がいたのお…ック」

────どきり。

お酒臭いおじいさんの言葉に不覚にも少しだけ胸が鳴る。
…変な期待を、抱いてしまった。
もしかして、もしかしたら、私が探している彼らではないかと───。

「…あのっ」

「んん〜〜?ヒック!」

「その、私より前にここへ来たその人たち、どんな人たちがいましたか…!?姿形とか、髪の色とか、…何か特徴みたいなもの、ありませんでしたか?」

彼らならまず姿形でわかる。
普通の人とは少しだけ違うから。
お酒臭いおじいさんは、うーんうーんと唸りながら頬をほんの赤くして考えた末に口を開いた。

「──…うーんすまん。なーにも覚えとらん。ヒック」

ビキ、と脳内の血管が切れる音が自分でもした。あ、ちくしょうとかそんな物騒なこと一瞬たりとも思ってないから。…大丈夫よ。

はああああ……。なんでほんのちょいと前にのことも覚えてないのよ………一人ぐらいの特徴は覚えてるでしょう。






……結局。
何も思い出せないお酒臭いおじいさんにとりあえずお礼を言ってから再び人混みを歩み始めた。

はあ、とため息を吐きつつ視線を下げると、ふと足元に目がいく。
浮遊力で常に浮いているため靴を履かない癖がついてしまい、靴を持っていなかった。
そんな時、もし地を歩かなければいけないときに困るだろと団長が靴をプレゼントしてくれたのだ。
どんなものにしようか迷ったらしいけど、『白くて綺麗な足には黒が映えると思ってな』とさりげない褒め言葉をストレートに面と向かって言われたことを思い出して、不覚にもじわじわと頬に熱がこもった。


それから地に足をつくときは、必ずこの靴を履く。私の大切なもの。

…メリオダス。元気にしてるのかな…

無茶してなきゃいいけど…すごく心配でたまらない。






…早く、誰よりも早く会いたい。





「……だ、んちょ…。メリオダス…──」

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