FlOWER

□夢で逢えたら
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───それにしても、随分と人がいるわね。人混みに流されないように気を付けなきゃ…










ドン
「っ、きゃ…!」
「ふわあっ!?」

注意を払いながら行動しようと考えていた矢先、さっそく人とぶつかってしまい尻餅をついた。少しおどけた可愛いらしい声からしてなんとなく女性だとわかって、同じ身として慌てて立ち上がった。

「ごめんなさい…!私の不注意で…っ」
「っえ、そんなことないよ!!ボクも帽子で視界が見えずらくなってて…!」
















…え?……待って、今、なんて言ったの…?
────────ボク?

差し出した手にのせられたのは、自分と変わらない大きさの少女の手。
確かに黒い帽子とマントで服装はどんなものかわからないけれど、声は可愛いらしく、体型的には少女と見える。

けれど少女は自分のことを、『ボク』と自称していた。

……………きっと何か理由でもあるのね。初対面の方に失礼だったわ、いけない。

「…うわっ。ほんと全然見えてない…!!ごめんね、ちゃんとキミの顔見て話さなきゃ!」
「…ふふっ。すごく可愛らしい帽子ですね?どこからいら、」

深く帽子を被った少女がゆったりと顔を覗かせた瞬間、全身が凍ったかのように身動きできなくなった。

驚きで無意識に瞳が大きく開かれる。






「えーっ…とね…なんて言えばいいのかなあー…んんーと……あっ!ほらっ、」

顔を覗かせた少女と、やがてぴったりと初めて視線が重なる。























「……ミサ…?」
「ディ、アンヌ?」

ぱちくりと見開いた瞳と視線が合わさった瞬間、しばらくの間二人してフリーズしていて、我に返った少女、ディアンヌは、私の身体をこれでもかってぐらいに強く強く抱き締めた。

「っ!ディアンヌ…?…ほ、んとに?」
「っっっミサ!ミサ…!ボクだよっ!正真正銘ディアンヌだよっ!!」

ディアンヌ、の部分だけ周囲に聞こえないように気をつけて噛み締めるように肩口で言う彼女はぽろぽろと涙をこぼしながら精一杯私に微笑んだ。

不覚にも昔から彼女の涙姿には何か誘われるものがあって、感情を揺さぶられてはつい涙してしまう癖があった。

変わらない。…変わらない光景。涙脆いところは相変わらずな彼女は変わらない。正真正銘の、私が知ってるディアンヌだ。笑顔も、見ない間に随分と綺麗になった。

…団長には相変わらずなのかな?

昔のふとした光景を思い出して、ふふっと微笑んだつもりが、ぽたりと瞳から雫がこぼれてディアンヌがそれを見て、ミサも嬉しいんだねと笑った。

───やっと、見つけた。
ディアンヌがいるなら他の皆を探すのにも手がかりになることがあるはず。

「良かったディアンヌ…無事だったのね…」
「うんっ!!へへ…本当に本当にミサだ…!ずっと探してたんだよ、キミのこと…」
「…うん。ごめんなさい、心配かけて…でも、なんともないの。神様のようなすごく親切な方にお会いして、救われたの」
「…そっか。きっとすごく大変だったよね、これまで…痛かったよね、悲しかったよね、あの日…でも良かった、また会うことができて。一安心だよ、ボク」
「うん…いた、かった…けど、救われたから……ちりぢりになる直前、団長の体温を感じることができたから…怖くなかったかな」
「うん、うん…良かった、本当。…〜〜〜〜っっっミサ!話し変わるけどっ、またまたすっっっっごく綺麗になったね!!団長もびっくりだよ!絶対惚れ直すね!」

がばっとディアンヌに抱きつかれ倒れそうになるも、ぐっと足を踏ん張って受け止めれば、ディアンヌの"団長"という言葉にはっと我に返る。

……団長…、メリオダス…今どこで何を…

「…あっ!聞いてよ!この前なんて団長ってばさ、ボクと昔話すれば相変わらずミサの話ばっかりで仕舞いにはデレデレしちゃってさあ!」
「そ、そうなの?……───ディアンヌ…この前、て言った?」
「うん?うんっ!この前ってゆうか、確か昨日の夜かなあ?」
「…き、のう?」
「うんうん!…あっそうそう!これから団長たち驚かす予定なんだあ。…で、ボクその為に今から始まる喧嘩祭りに出るからミサ応援しに来てっ!絶対だよ!!」

相変わらずのおしゃべりは変わらず、ニコニコとそう話しをするとディアンヌは、年に一度バイゼルで行われる喧嘩祭りというものに参加するという。

場所はあそこだからっと会場となる場所を私に指差して教え、語尾にハートマークがつきそうなほど何だか嬉しそうに言うと私が呆気にとられ場所を確認したことを察すれば再び帽子を深く被り直して会場に向かおうとし、あ、と声をこぼして振り返った。

「ディア、」











「言うの忘れてたっ…団長はそこらへんで見てて、参加もするみたいだからっ。団長が出て来たら応援して上げてねミサ!また後で皆と合流しよう!迎えに来るからっ!」








バイバイっ!と手をふりながら人混みを走って行ったディアンヌの言葉を呆然としながら脳内で再生してみる。



くらり、目眩がして、ザワザワとした人混みにも関わらずへなへなと座り込んだ。

おかげでどうしたんだ、と声をかけられるくらい心配され、注目を浴びる。

でもそんなの、お構い無し。












───探し求めていた彼等がいる。

ドキンドキンと心臓の鼓動が勝手に激しさを増していく。

団長に…メリオダスに、会える。



















────…頬が熱いのは、何故?

──…再会を果たすまで、もう少し。










「──そういえば……ディアンヌ、縮んだ?」

その謎がわかるまでも、もう少し。

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