story
□ぽっちゃりが好き…?
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『名無しさんちゃんて、彼氏いる?』
ちょっとわかり易すぎたかなと言ってしまった後に後悔した。案の定彼女は驚いて顔をあげて全力で否定した。
『いないの?』
「いないです…留学もしてたし…」
あ、そっか。一年海外にいたんだっけ。内心ホッとしたのと同時に、誰かに取られてしまうかもしれないという焦りにも似た感情が襲ってきて、気づいたら近くにあったチラシの裏側に自分の連絡先を書いて渡していた。
『今日少しでも時間あったら電話して?』
彼女はまた驚いていたけど、すぐに可愛い笑顔でしますねって言ってくれた。多少強引な部分もあったけど、連絡先交換するのには成功したから良しとしよう。
そのあと2本の収録を終えて家に帰ると24時を回っていた。携帯を確認すると知らない番号からの着信があって、すぐに名無しさんちゃんだと確信して夜中にもかかわらず掛け直した。
プルルルル…
プルルルル…
やっぱりもう寝てしまったかと切ろうとした時、明らかに寝起きの彼女の声が微かに聞こえた。
「も……もし…?」
『ごめん、寝てたよね?』
「…………翔くん!」
長い沈黙のあと彼女は結構な声の大きさで俺の名前を呼んだ。寝ぼけてて誰からの着信か確認していなかったんだね。
『あははっ』
「わ、笑わないでください!」
受話器越しだけど顔を真っ赤にしている彼女を想像できて、一人で盛大にニヤニヤしていたと思う。
『あのさ…もう夜遅いんだけど…ドライブ行かない?俺明日オフなん「行きます!」』
俺が言い終わる前に彼女が行くって言ったのがめちゃくちゃ嬉しくて、そのままガッツポーズした。今日の俺は自分でいうのもなんだけど超キモいと思う(笑)
「私も明日大学休校です」
『家智くんの実家の近くなんだよね?とりあえず智くん家行けばいいかな?』
「はい!待ってます!」
そのまま電話を切ったあと、鏡を何度も確認して部屋を出た。智くんの実家までは車で30分ぐらいなんだけど、その間ドキドキしてしょうがなかった。
智くんの家の前について、彼女に着いたことを知らせようと携帯を手にすると足音が聞こえて、その方向を見ると智くんの家の隣の家から彼女が出てきた。
寒そうだったからそのまま手招きして助手席に座らせた。
『近所って聞いてたけど隣なんだね?まじびっくりだわ』
「そうなんですよ!」
智くんの実家には何度かお邪魔したことあるけど、隣にこんな可愛い子住んでるってなんで言ってくれなかったんだろうと考えていた時彼女が言った。
『おおちゃん、私が翔くんのことかっこいいって言ってるのに拗ねて、私が成人するまでは絶対会わせないって言ってたんですよ!』
「そうなの?」
そうなの?なんて冷静に返したけど、本当は全然冷静なんかじゃなくて運転していれば彼女の方を見ないで済むから助かったと思った。ドキドキしすぎて彼女のこと見る余裕なんてないから。
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