シンオウ地方を旅する

□旅立ち
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その後、洗面所に行って顔を洗ったり歯を磨いたりしたあと、トントンと心地よい包丁の音が聞こえるキッチンに向かう。


『海翔ー?』

「んー?」


パンが焼けるいい匂いがする。
今日の朝食はトーストかな。
なんてことを考えながらこちらに背を向け主夫を真っ当する海翔の名を呼ぶ。


『この格好どう?おかしいところない?』


私がそう言うと振り向いて少し驚いた顔をする海翔。


『え、やっぱり何か変?』

「…いや、いいんじゃない?」

『じゃない?ってなにさー。そこはお世辞でも可愛いよ、って言っといてよー。』

「あーはいはい可愛い可愛い。」


またまな板に向かってしまう海翔。
…海翔さん冷たいです。


『うわ、絶対微塵も思ってない。』

「そんなに朝ごはん抜きがいいならそうするけど。」

『ゴメンナサイ。』


大人しく椅子に座った私は何気なくテレビをつける。


[今回はコトブキの大人気占い師!Kさん特集を…]


『へぇ、占い師だって。』

「どうせそんなの適当に言ってるに決まってるよ。」


湯気の立つ朝食をテーブルに運びながらそう言う海翔。


『もう、海翔は夢がないなぁ。』


私は目を朝食に移し、今日も美味しそうなそれらに感動する。


『うーん、旅に行くのは楽しみだけど暫く海翔のごはん食べられないなー。』

「…また、食べたくなったらポケモンセンターの厨房でも借りて作るよ。」


少し照れくさそうにしながら海翔は言う。


『ホント!?ありがとう!海翔大好き!!』

「…ん。ほら、食べよう。」


私の言葉は華麗にスルーされ、海翔は1人手を合わせる。
私も渋々手を合わせると、その様子をチラっと見る海翔。


「『いただきます。』」


もう慣れてしまった海翔と2人のその言葉。
別に父さんも母さんも会えないわけではないし2人でも寂しくはないんだけどね。


『新しい仲間とかできるかなぁ?』


パンを一口齧り飲み込んでから話す。
うん。やっぱり今日も美味しい。


「できるよ。ミオなら。まぁボクとしてはできなくてもいいけど。」

『えぇ?なんで?』

「さぁ?」

『ハッ…まさか私を1人にして旅の途中で置き去りにする気?』


そう言うと海翔は呆れた顔をしながら海翔お手製ドレッシングのかかったサラダを一口口にする。


「しないよ。1人になんて。」


少し間を空けてから呟くように話す海翔。


『えぇ?ホントー?』


ニヤニヤと笑いながら話す私に対して無表情のままの海翔。


「…だって、相棒…だしね。」


海翔が私のことを相棒と言ったことに少し驚く。
それは私が普段から口に出す言葉。
海翔も私のこと相棒って認めてくれてたんだ…。
私はさらに頬が緩む。


「なに。」

『ううん。海翔、ありがとうね。』


そのまま海翔は私と目を合わせずに黙々と食事を口に運んでいたが、暫くして、うん、と呟かれたのを私は聞き逃さなかった。
 
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