シンオウ地方を旅する

□マサゴタウン
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「それで…私に何か用でもあったのか?」


研究所の中に通され研究員の方に頂いたお茶を啜る私にナナカマド博士は問いかける。


『えーと、特に用といったものではないんだけど…ちょうどマサゴタウンに立ち寄ったんで、海翔のお礼も兼ねて挨拶に…と。』

「海翔?…あぁ、彼の名か。良い名を貰ったんだな。」

〈まぁ、ね。〉


怖くて近寄りがたい雰囲気を放っていたナナカマド博士だったが、海翔と私を交互に見て少しだけ穏やかな表情を見せた。
海翔も若干嬉しそうな顔をしているように見える。


「ところで、ミオは立ち寄ったと言ったが…これから、何処かに行くつもりか?」

『…何処かに…というか、旅をしようと思いまして。』

「うむ、そうか…。」


ナナカマド博士はそう言うと何かを思い出したかのように立ち上がり、私に少し待っていろ、とだけ言い部屋を出ていった。


『な、なんだろう…海翔。頻尿かな…。』

〈うん、ボクもミオは馬鹿だと思うよ。〉

『そんなの一言も言ってないデス。』


暫くしてナナカマド博士は赤い機械を手に持ち戻ってきた。


「すまんな。どこに置いてあったか忘れていてな。」

『それは…。』

「ポケモン図鑑だ。出会ったポケモンを記録することができる。」

『へぇー!』

「知ってのとおり、私はポケモンについて研究をしている。」


そこら中に散らばった資料には何度も“ポケモン”という言葉が書かれている。
私が物心付いた頃からマサゴでポケモンの、主に進化について、研究をしているナナカマド博士。
数十年と研究を続けていて、まだはっきりしていないのだから、ポケモンは謎に秘められているのだろう。



「これから、ミオは旅に出てたくさんのポケモンと出会うだろう。」

『そう…だといいんですが。』

「なに、君なら大丈夫だろう。…それで、その出会ったポケモンを1匹1匹このずかんに記録していってほしい。」


ナナカマド博士が手に持った図鑑からピコンと起動音がして、電源が入る。


『…研究のお手伝いということですかね。』

「…早い話、そうなるな。だが、これを受け取るも、受け取らないも君の判断に任せる。」


私の判断で、とは言われたが思わず海翔の顔を見てしまう。
ああ、私はずっと海翔に頼りっぱなしかも。


〈いいんじゃない、貰っておけば。何かの役に立つかもよ。〉

『ん…それもそうだね。』


私は一度頷きながら海翔の言葉に返事をする。
海翔はこんな時もこちらのメリットを考えてるんだな。
海翔らしいといえば海翔らしいが。


『では、頂いてもいいですか?』

「ああ、こちらの方こそよろしく頼む。」


私は博士の手からポケモンずかんを受け取る。
受け取ったポケモンずかんをそのまま海翔にかざしてみると機械的な女性の声がエンペルトについての説明をする。


『お、すっごい。』

「機能を早速理解してくれたようで助かる。」


海翔も興味を示したのか私が持つポケモンずかんの画面を覗き込んでいる。


『翼で流氷を切断…?海翔、そんなことできるんだ…。』

〈ボクに言われてもそんなの試したことないけどね。〉
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