詩集

□月の子守唄
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「僅かですが、熱がありますね…」

寝台に腰を下ろし、俯いてぽけーっとしている悟空の額に、自分の額を当てる。
元々体温の高い悟空だけど、今回は一際熱い。

「ったく……池に落ちて帰って来るからだ馬鹿が。」

金蝉様も、呆れたように、でも心配の色を伺わせながら呟く。

「ごめん……」
「金蝉様、悟空は私が看ていますから、お仕事を……」
「…頼む。」

金蝉は悟空をちらっと見てから、隣の事務用の部屋に移った。

「悟空、とりあえず温かくして寝てよう?ごはん持ってくるね?」
「……わかった」

いつもより弱々しく笑う悟空に、今日は甘やかしてあげようと決め、微笑み返す。
部屋を出て、厨房でお粥と、最近二郎神から教わった子供が好きそうな流動食を作る。
部屋に帰ると、寝息をたてて悟空が寝ていた。

「ん……」
「……ちょっと苦しそうかな……」

少しの汗をタオルで拭う。
それでもいつもより悟空は苦しげに呼吸を繰り返していた。

「……水と布を…」
「持ってきた。」

隣の事務用の部屋に繋がる扉から、金色が覗く。

「金蝉様……」
「こういう時くらい呼び捨てろ」

ぐしゃりと乱暴に頭に手を置かれて、ちょっと照れたりしてみる。

「仕事は、いいの?」
「終わらせた。元々昨日から持ち越した物しかなかったからな。」

無表情に近い顔で、脇の台に桶を置いて、タオルを絞る金蝉はなかなかお父さんが板について来た。

「おかゆはあとで暖めなきゃね。」

心なしか力のない茶髪に指を通して、目にかかった前髪を払うと、僅かに睫毛を揺らしてさらに深く眠りについた。
金蝉は部屋の隅にあった椅子を、出来るだけ音を抑えて二脚持ってくる。
金蝉の隣に座ると、遠慮がちに肩を抱かれる。
それに甘えるようにすり寄りながらも、悟空を見やる。

「……悟空が風邪なんて」
「すぐよくなる」

間髪入れずに返事をした金蝉も、いつもより眉間のシワが一割くらい増している。
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