愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□揺ぎ
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そして、それから数週間後。
とある試合で黄瀬は自分の中の異変に気付く。
『俺は今日、ゴール前にいない限りシュートはやらねえ...ボールはパスしかしねえ』
試合前に青峰からそう告げられ、チームは大きな戦力を失った試合に挑んだ。
(俺が、青峰っちの穴を埋めなければッ...!)
いつも以上に必死だった。
ボールを奪って、相手を掻き分けて、走って...
「...あれ」
ゴールは見えた。
なのに、周りに敵どころか見方もいない。
ボールがゴールに入る。
そしてまた相手にボールが渡り、駆け出す。
気が付いたら、またボールを自分が握っていて...やはり周囲には誰も、いなかった。
試合終了のブザーが鳴り響いた。
『優勝』した。
観客席は湧き上がっていて、心から喜びを表してた。
黄瀬は、ふと顔を上げて目があった。
「―――」
青峰の、冷めきった目が自分を見つめていた。
その瞬間、黄瀬はまるで真っ暗な世界に取り残された感覚に陥った。