愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□揺ぎ
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「...明日は体育館の耐震性の点検日だ。
よって、体育館を使う部活は全て休みだ」
赤司の口から淡々と告げられる明日の話の中に今日の試合に繋がる言葉はなかった。
ざわざわと話をしながら解散し始めるチームメイト。
「今日凄かったな、お前!」
「...!」
観客席で今日の試合を観戦していた二軍の同級生が、黄瀬の首に腕を回して言った。
「なんつーか、もう、悔しいけどお前の虜だったな」
「やっべー!今超うずうずする!!
何で明日バスケさせてくれないんだよ、こんな試合見せられた後に点検なんてさ!」
「なら明日広場で一緒にボール触ろうぜ!!」
黄瀬が呆気にとられている中、彼等は話を進めその場から去って行った。
『今日凄かったな、お前!』
『超うずうずする!!』
そして彼等が口々にした言葉。
『バスケ楽しー!』
「バスケ...楽し、い...」
頭の中で木霊する彼等の言葉を、黄瀬は無意識に口にした。
バタンとチームメイトが体育館入口のドアを閉めた。
黄瀬は夕日が差し込む薄暗い体育館の中に一人、ボールを持って佇んでいた。