愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□揺ぎ
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しばらくその場に立ち尽くしていたが、やがてゆっくり歩いてコートに入り、そのままゴールに近づいた。


誰でも確実にシュートを決められる位置まで歩き、そしてリングを見つめた。


リングは何も変わっていない。

高さも、大きさも、全て。



黄瀬はボールを頭の少し上で、構えた。








ダンッダンタンタンタンタッ...


ボールが音を立てて掌から滑り落ちる。









「―――ッは」
(...!!?)



それと同時に自分の呼吸音がやけに耳に付いた。


一気に全身の力が抜け、ガクリと膝を付く。




「はっはっはぁっ...ひっはっ、ふっ!」
(何だ、これ...!!?)



呼吸のペースが乱れる。

ヒュウッと、どこか嫌な音がし始めた。




(息が、出来ない!)




そう感じた瞬間に、自分をコントロール出来なくなった。



「ヒッハァッヒュウッ!!」



脂汗が全身から吹き出る。

無意識に胸元を力一杯握りしめている。




(誰か、助け―――)










...誰もいない。

チームメイトは楽しそうに会話して帰っていった。
休日で生徒どころか、教師もいない。



バスケしてんのに、誰も―――見えない






俺、......





ぐらりと視界が歪んだ。

頭の重さで後ろへと身体が傾くのがわかった。











あ......









黄瀬は、倒れた。



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