愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□影の覚悟
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「ぅぉおりゃぁあああ!!」
聴き慣れた摩擦音と、力強いが聴き慣れない声。
ミニゲームをしていた誠凛バスケ部の火神の声だった。
「...!」
彼のシュートの瞬間を丁度見た美男子は、ふっ口角を上げた。
誠凛の中では圧倒的な強さなのだろう。
「キセキの世代にも勝ってるかもな」
彼のチームメイトの中ではそんな言葉も飛び交っている。
「海常高校と練習試合!!??」
監督-リコ-はさらりと告げる。
「そして、海常高校は今年キセキの世代の一人...黄瀬涼太を獲得したところよ」
どよめく誠凛。
「...しかも、黄瀬ってモデルやってるらしいぞ」
付け足して言う日向にチームメイトは男のプライドをかけて文句を言う。
周りで勝手に話が進んでいるのを見て、リコはため息をつく。
「...ん?」
今まで気付かなかったが、どこからともなく同姓の黄色い声が...
リコが後ろを振り返ると、そこには同じ学校の女子生徒の長者の列。
その列は体育館の中にまで達している。
それだけではない、上を見上げるとそこにも女子。
見渡す限り...体育館は女子生徒でいっぱいになっていた。
「あー...もう、こんなつもりじゃなかったんスけど...」
少々困ったように微笑むこの場ではありえない制服を着た男子生徒にサインをせがむ女子が群がっている。
そして、誠凛バスケ部の皆が眉間にしわをよせる。
「アイツは...」
(何で、ここに...)
キセキの世代『黄瀬涼太』が―――?
「...!」
体育館ステージに腰掛けていた黄瀬が、自分をまっすぐ見ている視線の先に顔を上げる。
「...お久しぶりです」
「久しぶり」
やっぱりと言わんばかりに、そして黄瀬と挨拶を交わした黒子に誠凛メンバーは視線を集める。
「す、すいません...マジで、あの...えとー、てゆーか...五分待っててもらっていっスか?」
やらかすのは毎度のことなのだろう。
とにかく、頭に手を当てながら慣れた手つきで彼女等にサインを書き、黄瀬は笑顔を振りまいた。