愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□影の覚悟
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ピッ...ピッ...ピッ...
規則正しい電子音。
白く曇る酸素マスク。
黒子は、数ヵ月ぶりに莉叶の病室へと足を運んでいた。
「...お久しぶりです、莉叶さん」
返事のない彼女に向かって、椅子に腰かけながら言う黒子。
「僕も無事、高校生になりました」
何やら手元にノートを持ち、シャーペンを動かしながら語り掛ける黒子。
「僕は今、誠凛高校男子バスケ部に所属しています。
みんなとてもいい方達ばかりで...火神君という素晴らしいプレーヤーにも出会えました」
時々止まっては、また動き始める手。
「...今日は、久しぶりに黄瀬君とも会うことができました。
彼は僕の想像以上に進化していました。
でもきっと、経験の浅さから言ってまだこれから伸びるでしょう」
ピタリと、小さく口を開けたまま手の動きも止まる。
「...ずっと考えていました。
莉叶さんが、一体何を考えていたのか...そして、僕達に何を望んでいたのか。
ついこの前までの僕には答えが出せませんでした」
黒子はそう言ってシャーペンを開かれているノートの上に転がした。
「莉叶さん、僕はキセキの世代を倒します」
黒子はそう言って、自分の手より小さく白い手をそっと両手で包んだ。
「...彼等が掲げる『勝利』を全面否定するつもりはありません。
ですが...それでも彼等は間違っている。
莉叶さんが望むことではないかもしれない、それでも、僕は貫きます。
...みんながもう一度、あの頃みたいに笑えるように...」
月明かりが、二人を照らした。
to be continued