愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□帝光中とバスケと君と
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桜舞う校舎。
真新しい白のブレザーを来た新入生が、入学式が終わると同時に校庭に溢れ出した。


自分も、その中の一人で。


「あのぉー...」

...あぁ、来た。


「ん?」


とりあえず、反応を示す。


目の前の女子中学生の胸には新入生の印である桃色の花が飾られていた。

それが視界に入ると同時に、一人だったはずの目の前の女子の人数が一気に増える。



「ねえねえ、名前何て言うの?」

「部活何入るの?」

「好きな子出来た?」


...お決まりのパターンっスね。
まぁ、初対面の会話なんてそんなもんスけど。

お決まりパターンには、俺のお決まりパターンで対応させてもらうっスよ。



「黄瀬涼太っス」

「ん〜まだはっきりは決めてないんスよ」

「今はいないっスね」



「あのっ...わたしと付き合ってください!」

「あ〜...俺、今彼女作る気無いんス」





春が終わり、夏が来て、秋が訪れ、冬が過ぎた。


...満たされるものは、何もなかった。

勉強にも特に差し支え無し。
強いて言えば小学生の時には触れたことがなかった英語に興味を持ったぐらい。

気になる部活にも足を運んでみた。
でも、一つの季節が終わると同時に姿を消した。

自分がフラフラするたびに、女子もフラフラと自分に付いてくる。

隣で騒ぎ立てる。
黄色い声で名前を呼ばれる。


別に嫌ではない。
が、面白くもない。


嫌われるよりずっとマシだということはわかってるし、自分を見てもらうのはむしろ気持ちがいい。


モデルにも『職業』という形で就いてみた。
実際は『なんとなく』とか『遊び』などの生半端な気持ちだったが。


...でも、何もかもがつまらなかった。





そんな自分が、二年生へと進級した。



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