愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□光で、影な君
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「ああ、最高だよ」

一番にその声に応えたのは赤司。


その人物は真夏の逆光を浴びていて、顔を確認することができない。



「俺このまま眠りそうだわ」


「夏風邪ひくよ、青峰。
 ...はい、紫原」


「わ〜お菓子、ありがとう」


「...全く、甘やかし過ぎなのだよ」


「そう言わずに...緑間のラッキーアイテム、今日は飴だったよね。
 檸檬飴食べて体休ませて。
 ...桃井ちゃん、彼にはウィダーゼリーの方が今はいいかも」


「え?」


「黒子、また気分悪いんでしょ。
 一発吐いておいで」


「すみませ...ぅっ」


「テ、テツ君ー!!」


彼の様子を見て桃井は慌ててトイレに黒子を連れだす。






な、何なんスか...こりゃ





「黄瀬、そのドリンクわたしのなんだけど」


「え?ぁ、ああ...って、ええええええええええええええええええ!!!!!!?????」


驚きのあまり口に含んでいた水分を吹きだしてしまった。




「わたしのだと知った途端、一度口に含んだものを吹き出すなんて失礼な奴ね」


「い、いや、そういう意味じゃなくて...




「羨ましいのだよ」


「ん〜?ミドチン今何か言った?」


「いや、何も言っていないが」


「あ゛〜?嘘付くんじゃねーよ...明らかに今言ったろ」


「やめろ青峰...緑間、内部争いの元になる発言は控えろ。
 それに、それは俺の言葉だ」


「なんスかそれ!!!!????」



チームメイトの発言に突っ込みを入れる。
気が付けばこの突っ込みポジションは黄瀬担当になっていた。


しかし、周りの発言に黄瀬は自分の耳を疑った。


緑間から「羨ましい」
あの紫原が反応する
青峰がバスケ以外のことで喰らい付く
そして赤司が明らかに独占する意思表示をする


そんな彼等を、見たことがなかった。




「...えーと、あの...」


「何?」


...怒ってる


「も...申し訳なかったっス、今!今近場の自販機で別の飲み物買って来るっス!
 お金はいらないっス、容器は洗って返すっスだからッ」


相手の顔とか、今はもうどうでもいい
とにかくこの場さえなんとかなれば...!


その場から立ち上がり黄瀬は自分のカバンを漁り財布を取り出しながら言う。


「だからッ!!!...


ブシャァァアアア......








「...へ?...」


黄瀬の口から間抜けな声が漏れる。
立ち上がり、振り返った瞬間の出来事だった。


少し下を向くと、あの人物が黄瀬が口を付けたドリンクボトルを持って目の前に立っていた。


色素の薄い茶髪は緩く二つに結られていた。
そして、南国の海のようなクリアなブルーの瞳が黄瀬を見ている。







「...落ち着いた?」


プシュウと凹んでしまったボトルが音を立てながら空気を取り入れ、元の形に戻る。


「ぁ...はいっス...」


「怒ってなんかないよ」


そう言うと、目の前の人物-少女-はタオルを黄瀬の肩に背伸びして掛けてその場から離れた。





「赤司、今日はみんな疲れてる。
 あんまりやると怪我するかもしれないから、程々にね」


「ああ、俺もそう感じていたところだよ」


少女は赤司に声をかけてこの場から姿を消しかけた。




「黄瀬ー、早く頭どうにかしないとそのサラサラヘア保てなくなるよー」


そう言い残し、ようやく彼女は姿を消した。


その五秒後、黄瀬は自分にかけられたものがスポーツドリンクであることにようやく気付き慌てて水道場まで走った。





(ホント、一体何なんスか...)


「...あれ?
 俺、心の声をいつ漏らしたっスか...?」









『怒ってなんかないよ』




...エスパーっスか



ザァァアと頭から水を被り、さらに頭を冷やしていた。


to be continued


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