愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□君の名前と、情報を
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赤司と少女のやり取りは実現した。

夕方早くに今日の練習を切り上げたのだ。


夏に入って、日が長くなった。
片付けが終わって外に出ても、まだ日は沈んでいない。



「黄瀬君」

名前を呼ばれて振り返ると誰もいない。


「ここです」


「ぅわああ!!?」


声の主は目の前にいた。


「く、黒子っち...こんなとこまでミスディレクション発動させないでくださいっスよ」


「出してません、何度呼んでも上の空な黄瀬君が悪いんです」


帰りますよ


そう言って先を歩き始めた黒子の背を追って黄瀬もその場から駆ける。



「黒子っち〜」


「何ですか?」


「俺、今日めちゃくちゃ気になってしょうがなかったことがあるんスけど」


「...何ですか?」



一軍のマネージャーの桃井より一人一人の状態が見えていた
バスケの時にも、クラスの中でも見たことがないチームメイトの態度
そして、いきなり自分にスポーツ飲料をぶっかけられたこと



「何なんスかあれ、俺女の子に嫌われるの初めてなんスけど!」


「僕も今、君に足を引っ掛けようと思いました」


「何でっスか黒子っちまで!!?」


「...わかりません」


「いっスよもう!!」


わーんと嘆く黄瀬を横に、黒子は言葉を続けた。




「...彼女の名前は、白鳳莉叶さん...僕等と同世代です」


白鳳莉叶(ハクホウ リノ)



「彼女は僕達と一緒にバスケ部に入部してきました...マネージャーとして」


『マネージャーとして』
なぜか黒子は強調した。


「黄瀬君が莉叶さんをあまり見かけることが出来ない理由は、三つあるんです」


一つ目は、彼女が二軍・三軍の正式なマネージャーだから

一軍の正式マネージャーは桃井さんです


「でも、赤司っちにアドバイスとか...桃井っちがわからないこととか...つか、俺も初めは二軍だったんスけど?
 あんな子いたっけ...」


「はい、彼女の存在は異質です」


簡単に言えば莉叶さんは、桃井さんの影です

桃井さんの目が留まらなかったところを指摘、そして一軍と二・三軍の掛け橋のような存在です


「それって、桃っちよりあの子を一軍マネージャーにした方が効率いいんじゃなスか...?」


「その考えは正しいです。
 しかし、莉叶さんはそれを自ら拒んだ...二つ目の理由です」


彼女は『わざと』『自ら』影に身を染めたんです

莉叶さんには、僕と同じミスディレクションのような...人から存在を認識させないような体質を会得したらしいです

自分と異なることを強いて言うとしたら、僕はこの体質をコントロールできませんが彼女は可能ということです



「ようするに...目立つことを嫌ってるってことスか...?」


「まあ、そうなりますね」


「コントロールってことは、まさか」


「はい、元は逆でした」


三つ目、莉叶さんはとても強い...光でした



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