愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□君の名前と、情報を
2ページ/5ページ



「莉叶さんは、僕等よりずっと前からバスケをしていました。
 僕が聞いた話によると、彼女は物心付いた時にはボールに触れていて小学生に入学すると同時にバスケットボールクラブに所属したそうです」


初めはただ、ボールの扱いが上手いと見られていただけだったそうです

そんな中で、彼女は学年が上がるにつれて徐々に確実に、力を伸ばしていきました

そしてとうとう五年生になった時、レギュラー入りを果たしました

それと同時に、彼女の存在は一気に知名度が上がります

レギュラーになってから、莉叶さんのチームは無敗だったそうです

つまり、全国大会二連覇を達成したんです



「へえ〜、凄いじゃないっスか」


「はい、でも驚くのはまだ早いです。
 彼女が所属していたチームは、男女混合でした」

莉叶さんの学校には、指導者が見つからないという理由でバスケクラブ団体は一つしかありませんでした

『みんなで仲良く楽しく・バスケの楽しさを実感してもらう』

プレーをするからには幼い彼等にも『勝つことの楽しみ』を味わいたいと思っていました

当たり前です、やるからには上を目指して勝ちたいです

小学生の彼等にも僕等と同じそんな気持ちがありました

でも、そのチームは特別強いわけではありませんでした

そしてそんな中、莉叶さんが入ってきて彼女の才能が開花し始めます

身体が大きく成長し、変化する時期

莉叶さんは、徐々に自分の身長を抜かしていく異性に怯むことなく立ち向かいました

そして、偶然とは言えない...異例の全国大会二連覇を成し遂げました

全国の中学校からオファーが来ました

バスケ連盟もどの中学校に行ったとしても、アスリートとしての道を...未来のオリンピック選手を育てるという意気込みで彼女の様子を見ていたようです



「...ですが」


「...?」


「莉叶さんは、全ての期待を裏切り...予想に反した行動を取りました」


プレーヤーとしての力を、捨てたんです

もう自分はバスケをしない

選手として、ボールを触らない

周りは驚きを隠せず、指導者は怒鳴るように説得し、連盟のトップの人も手紙を送ったりして何とか考えを変えてほしいと頭を下げたそうです

...でも、彼女は逆に『辞めさせてほしい』と、頭を下げ続け...結果、プレーヤーとしてバスケ界から消えました

...噂によると、それが原因で暴力に近いいじめにあったこともあったとか



「...でも、彼女はこの帝光中に自力で入学し、バスケ部のマネージャーとして身を寄せました」


「な...何でっスか?
 元プレーヤーがマネージャーなんて...そんなの...」


「聞いたことがあるんです。
 帝光中に来るのはともかく、どうしてバスケ部のマネージャーとして入部してきたのかと」


そしたら、莉叶さんは少し困った顔で...でもハッキリ僕に言いました


『わたし、バスケ、大好きだから―――』



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ