愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□君の名前と、情報を
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「...あの〜黒子っち、一つ言っていいスか。
 ...言ってることとやってること矛盾してないスかね、コレ」


「...はい、僕もそう思います」


バスケを辞めてしまったのは、バスケが嫌いになったのではなく。
もうバスケはしないと言って、ボールの傍にいる。



「あーもう...わけわかんないっスよ...」


「黄瀬君」


「なんスか?
 もうその話はいいっス、十分っスy...


「これは君に話しておきたいんです。
 ...確かに、彼女の話は滅茶苦茶です。
 でも、僕等はそんな莉叶さんにお礼を言わなきゃいけないんです」


「...はい?」


「僕がボールに触れたきっかけは、青峰君が誘ってくれたおかげなんです。
 僕はそれよりも昔にバスケに関わってはいたのですが、本当のバスケを教えてくれたのは...青峰君でした」



じゃあ、青峰君は一体誰からバスケの存在を教えてもらったのでしょう




「...莉叶さんなんです」


たまたま通りかかった公民館の中を除いたのが、青峰君のバスケの始まりだったんです

その中で一際目立った彼女に、青峰君は無意識に惹かれていました

でも、それを見たのはたった一回きり

安定して体育館を使う権利を取れなかったんです

彼女のチームはあちこちを転々として練習していたようです



「それだけではありません」



緑間君も、莉叶さんのプレーを見て刺激を受けたそうです

赤司君が初めてボールに触れた時に母親から彼女の名前を聞いたと

そして、あの紫原君も偶然付いていた全国大会優勝をかけた生放送番組で彼女を見つけた



僕等のバスケは、彼女から影響を受けた



そして、彼女がこの中学校に入学してくるという話を聞きつけてみんなここに来た



「...僕達の出会いは、莉叶さんが結び付けてくれたんです」


「...失望しなかったんスか?
 バスケ辞めるって聞いて」


「初めは...。
 特に青峰君は莉叶さんに強く問い詰めていました」


「青峰っちは...力ずくでもって感じっスよねぇ...」


「はい、最終的には力ずくでもプレーヤーとしての莉叶さんを取り戻すと言って」


勝負を挑みました


でも、その前に青峰君は言ってはならないことを言ってしまったんです



『お前、何でバスケ避けんだ。
 怖えのかよ、俺に負けることが。
 ホントは弱いんじゃねーの?
 それとも...』









『今までズルして勝ってきたのか?』








「...青峰君は、選手として言ってはいけないことを口にしてしまったんです。
 彼は、今でもこのことを後悔しています」


今まで黙っていた本人も、殺気立った目で青峰君を一瞬見ました

背筋がゾクリと、脂汗がぶぁっと出てきて、正直マズイと思いました

莉叶さんは青峰君の勝負を受けました

青峰君が勝ったらプレーヤーとして入部すること
莉叶さんが勝ったらマネージャーとして入部すること

1on1で、勝負は一回

バスケ部員全員と野次馬で体育館は溢れ返りました

黄瀬君以外の今の一軍メンバーも、もちろん傍で見守っていました



「でも、『見守っていた』なんて...そんな甘い言葉は今となっては間違いです」


自信満々に、身体もとても大きかった青峰君がギリギリでも勝つと誰もが思っていました





「...その青峰君が、瞬殺でした」


ボールを持っていたのは青峰君

先に動きで仕掛けたのも彼でした



一瞬でした

気付いた時には莉叶さんはゴール前に立っていて、青峰君は床に尻餅を付いていました


ボールが音を立てて転がっていくのを周囲の人達は息をするのも忘れてただ、見ていました


莉叶さんは、顔色一つ変えずに入部届けに『マネージャー』と書きコートの真ん中に置くと、黙って体育館を出ていきました



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