愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□ふわりと漂う
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(紫原っちは...どこっスかね)
あんなに大きな巨体が、中々見つからないでいた。
体育館の裏口に回る。
「何してんの〜?」
探していた声が聞こえた。
自分に向けられたと思われる言葉に反応しようと喉元まで「探してたんスよ」と出てきた言葉を飲み込んだ。
セミロングの髪を持った少女が、紫原と二人で座り込んでいた。
「いいからいいから...お、結べた!」
黄瀬はその透き通った声を聞いて反射的に隠れた。
「紫原、髪結んでるのもいいね」
「え〜...結ぶのダルイし〜」
...どうやら紫原の髪を結っているらしい。
「似合うよ〜」
「...ふぅん...」
興味なさそうに、彼は持っていたまいう棒を開封した。
「それより莉叶ちんの髪はどうなるの?
髪ゴム一本足りないじゃん」
「あーうん、まあね。
一つに結うよ。
それ、紫原にあげる」
「えーいいよ、髪結ばないし...聞いてんのー?」
「はいはい...それより」
サイドに髪を束ね緩く結ぶと、少女はその場から立ち上がる。
「お客さんだよ、紫原」
気が付けば黄瀬の目の前には、さっきまで紫原の隣にいたはずの少女の姿。
「お待たせ」
ヒラリと手を振り、莉叶はその場を去った。