愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□手を差し伸べてくれる先輩
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試合の後の黄瀬と莉叶の二人の出来事は、他者に知られるどころか「あの後黄瀬一人で何をしていたのか?」という質問すら飛んでくることはなかった。
黄瀬は何事もなかったかのように日々を過ごしていた。
莉叶も、普通に生活して、いつも通りに部活に足を運んでいた。
だが、青峰はあの試合の後から余計に練習に来る回数が減った。
そして、元から慣れ合いを嫌っていた緑間がさらに孤立し...「俺のシュートは誰にも止められない」と断言し始めた。
紫原も育ちざかりな時期に沿うようして身長がとうとう二メートルを越し、以前とは異なった「つまらない」の言葉を使うようになった。
とうとう、二人も才能が開花したのだった。
ピリリリリッ
ピリリリリッ
「...もしもし?」
ポケットに忍ばせている携帯を取り出し、着信をかけてくる相手の名前に一瞬驚きを見せたが、すぐに平常心に戻る。
「...あ?あー...まあ、運良く今、家にいるぜ。
...あぁ、わかった、じゃ...あの場所でな」
ピッとボタンを押して通話を切る。
秋風がザァッと、音を立てて吹いた。