愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□わたしという人間の、終わりと始まり
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二・三軍のマネージャーであるわたしは、観客席にみんなを引き連れて試合観戦・応援をする



優勝目前に控えた決勝戦で、数日前から青峰に感じていた違和感を黄瀬からも感じた


何とかして青峰を...と考えていた矢先、この感覚―――


試合が終わって学校に戻り解散すると、わたしは体育館裏口へと移動した



中にはあの黄瀬が一人で佇んでいた


その様子を、じっと見つめた












...嫌な予感は的中した



過呼吸を起こし崩れ落ちる黄瀬を背後から慌てて受け止める


慣れた対応を取ったものの、この時わたしは「彼はこのまま死ぬのではないか?」と思った


正確には、「黄瀬涼太という人間が、このまま壊れてしまうのではないか」だった



再び自分と重なる



勉強もスポーツも、わたしもやろうと思えば何でも出来た


異性から興味を持たれていたのも、自覚はしていた


黄瀬は、『自分そのもの』だった



なら、このままだとわたしのように


青峰という目標を見失った彼には、自分が一番に戻り...同時に、全てから愛されるが故の孤独に陥る


隣に並んで互いを高め合う存在が消えることは、とても言葉では表せない


そして、彼は人一倍優しい

馬鹿を造って装って、自分なりに自分を保ってきた


そんな彼を知っているから、きっと彼はこの先そんな闇すらも背負って笑うだろう


でもわたしには、今の彼にはそれが可能とは思えなかった












「...助けてくれて、ありがとう...莉叶」


...助けたのだろうか

心でこんなことを思いながら彼に触れてる自分が、罪悪感でいっぱいだった

果たしてこれが、本当に彼の『救い』になっているのだろうか









『莉叶』


彼の口から、初めてわたしの名がこぼれる


...あれ、「っち」は付けないんだね


でもいいや


十分、嬉しかった







自覚した


わたしは同情の感情を彼に持つのと一緒に、彼を『男』として見てしまっていたのだと


これは、名付けるならきっと...『恋』だ





彼を守りたい

そして、自分の希望である彼等を守りたい





そう強く思い、決意に変わった



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