愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□変わりゆく仲間、結束、そして絶望
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自動ドアの開きのスピードに苛立ちを覚えながらも、その人物達は一歩を踏み出した。
だが、建物の中に入った瞬間終始無言だった彼等は受付前で怒鳴り散らした。
「オイ!白鳳莉叶がいる場所を教えろ!!」
「おい、落ち着くのだよ。
...ここは病院だ」
「うるせえ!!
いいから早く教えろ!!!」
「青峰君!!」
「...」
周囲の注目を浴びるジャージ姿の彼等。
特に目立っている青峰を桃井は目を潤ませながら必死に、黒子と二人がかりで彼の動きを制していた。
「...先程ここに緊急搬送されたと聞きつけたのですが」
「あ、あぁ...今は集中治療室で手術中よ...」
冷静に言葉を並べた赤司にようやく受付の女性も状況を理解し、言った。
手術中と赤いランプが点灯している廊下に移動し、彼等は長く感じる時を待った。
紫原も弱音を吐かず、口に物も入れるのも我慢してただ、座り込む。
無言でこの場にいた。
二時間くらい経っただろうか、ランプの光が消えた。
中から手術に携わった医者が出てきた。
「莉叶はッ...女は!!?」
と第一声を発したのもやはり青峰であったが、彼はこれ以上大声を発しなかった。
医者の手袋には、彼女のものと思われる赤い体液がべたりと付着していた。
「一命は何とか取り留めたよ。
でも...」
「...それで?」
言葉を続けろと言わんばかりに、赤司が問う。
「...はっきり言って、厳しい。
意識不明の重体で、何より彼女がこの傷に耐えきれるかは私にもわからない。
出来る限りのことは尽くした...だが、目を覚ましたからと言ってこの状態では後遺症が残るのがノーマルだ。
...当分の間、何があるかわからないのでそれなりに覚悟をしておいてくれ」
言葉を失った彼等を見て、医師は目を伏せてその場から離れた。
桃井の大きな瞳からはボロボロと涙が溢れては落ちた。
―――後日、再び赤司が病院へ来いと一軍メンバーに一斉連絡を入れる。
次々と彼女が眠る病室に仲間が集まる。
その先では、急に脈が落ち生死の境の状態の莉叶が医師達に囲まれて処置を施されていた。