愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□「俺を見るな」
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今年は監督が争奪戦に勝ち抜き、あのキセキの世代の一人を獲得したと言っていた
噂では名の知れた人物。
スポーツ雑誌の特集でよく『中学二年からバスケを始めた大物選手』だとか『脅威の成長を遂げたイケメンな彼』などと中身を飾っている人物である。
プレーヤーとしては確かに文句はなさそうだし、三年の自分よりもレベルは上かもしれない
...まぁ、気安く一年にポジションを取られるつもりもさらさらないが
そんなアイツはこの海常でバスケをさせるために引っ張ってきたというのに、わざわざ入部届けを持って体育館に入ってきた
...俺の苦手な女子の大群を連れて
「...森山、ちと体育館入口から何から全てのドアとカーテンを閉めてくれ」
「え?あ、ああ...」
キャプテンである彼の言うことを素直に聞き入れ、森山は黄瀬のみを体育館に入れることを許可すると周りの女子生徒をなだめながらシャットアウトした。
「え?あ、えーっと...?」
自分の身の回りで何が起きているのかわからない黄瀬はキョロキョロと辺りを見回す。
と、目の前に一人の人物が立ちはだかる。
「あ!ここのバスケ部のキャプテンっスよね?
俺、今日からここでバスケやらせてもらうことになったっス。
よろしくお願いします!」
へらりと笑顔で入部届けを手渡そうと、黄瀬は頭を軽く下げながら紙を突き出した。
「...あれ?」
入部届けを受け取るどころか、相手から自分への声を発せられていない。
不思議に思った黄瀬がチラリと顔を上げたのと同時に...
「しばくぞこのクソ一年坊主がッ!!!!!!」
「ぶわっはぁあ!!!!!???」
俺はコイツにアッパーを喰らわせた。
それが、俺の『黄瀬涼太』との最初の出会いだった。