愛を込めて花束を-黄瀬涼太-

□特別な敗北
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「火神でも歯が立たない黄瀬の弱点が...」


「パス回し以外コート上で最弱の...黒子君...!?」



火神の発言に周囲は動きを止め、黒子一人に数多くの視線が集中される。











「...で?」



数秒反応しなかった黄瀬がようやく口を開く。




「...確かに黒子っちのプレーだけは見ても無理っス。
 けど...それで何が変わるっていうんスか?」


「変わるさ!
 第2Qで吠え面かかせてやる」





そのまま第1Qが終了し、休憩を挟む。

現在は8点差で海常が誠凛にリードしている。




「ったく何やってんだ!!?
 もっと点差は付けられたぞ!!!?」



海常監督がベンチに座っているメンバーに激を飛ばす。


だが、黄瀬はベンチの端で床の一点を見つめたまま返事もせず黙っている。


笠松はそんな彼の様子を黙って横目で見ていた。








そして、試合開始。



海常は先程と形を変えず誠凛とやり合う。

黄瀬を中心とした攻撃スタイルも、そのまま継続だ。


誠凛も負けじと3Pなどで外からも点数を取っていく。






「...なんか、変わったんスよね!?」


「!」



火神がボールを持った瞬間、黄瀬が彼のマークに付く。


だが、火神は黄瀬との真っ向勝負を避け、走り出した。




「...!?」
(ただのドライブ...またアレか...!?)



黄瀬が少し先を走る火神を追い続ける。


が、黄瀬は動きが鈍る。




「ッ!??」




火神がボールを黄瀬のいる後ろへと回したのだ。


予想外の展開に黄瀬も反応できず目だけで、自分よりさらに後ろへと行くボールを見送る。





(黒子っちと...連携!!?)





黄瀬の背後には、黒子。


彼の手にボールが渡った瞬間、瞬時にボールはコースを変更し再び火神の手へと渡った。


そして、彼はノーマークのままシュートを決める。



数秒後、また火神がボールを握る。




「またスか、同じ手は―――!」


先程と同じように火神がボールから手を離すのを確認して、黄瀬は前回よりも早く反応する。



中継に入ったのは黒子。


だが、海常は読み違えた。



黒子は火神に気を取られている海常を利用し、次はクラッチシューターの日向へとボールを流した。



点数が、どんどん縮まっていく。


黒子と火神の連携プレー。

点取り屋だった火神が黒子にパスを出すということで、選択肢が増え、さらには攻撃力が倍になるという...それが火神の狙いだった。



黄瀬は黒子の動きは真似できない。

つまりは、誠凛だけが使える攻撃パターンとなったのだ。





「はっ...は...」


海常のリズムが崩れ始める。




「...黒子っち...!」


振り回され始めた黄瀬は、誠凛の光と影を睨み付ける。





「...黄瀬君は強いです、僕はおろか...火神君でも歯が立たない。
 けど、力を合わせれば...二人でなら戦える」


「...やっぱ黒子っち、変わったっスね。
 帝光時代にこんなバスケはなかった...けど、そっちも俺を止められない。
 そして、勝つのは俺っスよ」



黒子っちとの連携をお返しすんのは出来ないスけど...黒子っちがフル四十分持たない以上、結局後半自力になるだけじゃないスか!!」


「...そうでもねーぜ」


「!!?」




黄瀬がボールを持つ、そして彼の目の前に立ちはだかったのは...






「黒子が...黄瀬のマーク!!?」



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