愛を込めて花束を-黄瀬涼太-
□相性最悪試合
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秀徳-緑間-が3Pを決めた時と同様の、ブザーが鳴る。
この一瞬の出来事に観客席も、そして試合を観に来ていた黄瀬と笠松も目を見開く。
点差は出た、が、このとんでもない黒子と火神のコンビプレーによって試合の流れはまだどちらにも傾いていない。
そして、再度緑間と火神が火花を散らす。
火神と向き合った緑間はボールを持っていたためシュート体勢に入りかけた。
だが、視界に黒子の姿が映り自らボールを仲間の方へと手放した。
「...緑間っち、今のは自分で打とうと思えばいけたんじゃ...?」
「...なるほどな」
「え?」
疑問を感じた黄瀬の隣で、笠松は落ち着いて2校のプレーを見守る。
「アイツ、影薄い誠凛一年が緑間の動きを封じてるんだよ」
「緑間、封じ...?」
「ああ、あの回転式長距離パスでな」
緑間の癖は、3Pが確実に決まることが分かればすぐに背を向け動き出す。
それは要するに、敵の速攻を防ぐというメリットも含まれている。
が、全員が戻るのではなく予想外に備えたリバウンドの為にゴール下に待機する仲間もいる。
緑間は速攻を防ぎに自陣に戻る。
それはつまり、緑間が動けるならば火神も動けるということ。
火神は緑間と同じ動きを取り、そして黒子の高速パスを受け取り点数を決めやすくなる。
だから、緑間は打てない―――!
「...にしても、そのパスを見せつけるタイミングと判断力...一発で成功させる度胸。
...再認識したぜ、アイツ、お前と帝光中にいただけのことはある」
百戦錬磨だな
「―――......!」
そう言った先輩の顔を見る後輩。
笠松は口角が上がっていた。
「高尾、マークチェンジ。
11番に付け」
「ぁ?はいっす」
コートの外の監督から指示が出る。
秀徳は先程とは異なった、超ノーマルな陣形を組んできた。
(...何を考えてるつもり...?)
リコがあごに手を当て、眉間にしわを寄せる。
が、その意味はすぐに理解した。
「なっ...!??」
「!??」
「そんなっ、黒子がミスとか...んなの初めて見たぞ!??」
そう、黒子のマークに付いた高尾が彼の目の前でボールをカットしたのだ。
「...いや、多分、ミスじゃない」
驚きを隠せない黒子を見て、伊月が日向に向かって告げる。
「アイツ-高尾-も持ってるんだ、イーグルアイ...いや、俺よりも視えるホークアイを!」
「...!」