ふたつの唇-赤司征十郎-

□Suit unexpected surname.
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「...じゃあ、行ってくるよ」


「いってらっしゃいませ」



日本有数の名家-赤司家-

その唯一の子息-赤司征十郎-




彼は普通より大きな玄関のドアノブに手を掛ける。




「...梢、何してる。
 早くいくぞ」


「あ、うん」



少し後ろから彼の動作を繰り返している彼女に対し、征十郎は一声かける。


外では超高級ブランドの黒い車が二人を待っていた。


征十郎に続いて、梢も後部座席に乗り込む。


ドアが閉まった音と同時に、車は動き出した。









わたしは赤司梢


小学校中学年の時のある日に彼-赤司征十郎-に家族として、赤司家に迎え入れられた


十二月二十日という、真冬なのに異常気象で大雨が降ったあの日から...わたしは苗字が変わった


元々あった苗字は、戸籍から何から今は全て抹消済みだ


わたしにも、今とは全く別の生活を送っていたころは『母』という唯一の家族が存在していた



...はずだ。



自分の戸籍を変更するときに、自分の母親の戸籍がなかったのである


しかも、その母親はわたしを...捨てた


わたしの中で家族だった唯一の絶対的存在は、子どものわたしを...裏切った


だから別に深く追及しようとも思わなかったし、正直過去に興味はない



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