ふたつの唇-赤司征十郎-

□Suit unexpected surname.
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「ここでいい、もう止めてくれ」


「いってらっしゃいませ」



征十郎の指示で、学校の少し手前で二人は地に足を付けた。


―――帝光中学校。

二人はここに通っている一年生だ。






「..じゃあ、俺はここで」


「うん、朝練頑張って」



学校の敷地内を少し歩いた先で、二人は別々の方向へと足を向けた。



征十郎はバスケ部に所属している。

一年生という身分で副主将を務めている。



そのため、人一倍早く朝練に取り組む。




そして梢は、まだ誰もいない静かな教室に一人入る。


誰も彼女の集中力を切らすことのないこの限られた時間の中で、ひたすらシャーペンを走らせるのだ。


日課となっている行為を行うためにまず廊下を歩く。



と、見慣れない壁紙が貼られているのに彼女は気付く。




...この前行われた学力テストの結果だった。

下から名前と点数を見ていくが、彼女の名前はない。

代わりに、あの彼がいつも通り頂点にいた。












わたしには、この苗字に劣等感というか、罪悪感がある


はっきり言って、わたしはそこまで出来た人間じゃない


スポーツはどちらかというと苦手意識が強い、が、女子の中では上にいた

勉強は教科ごとによって点数はバラバラ。
得意と不得意が丸分かり

そして、魅力がない

つまり、自分に自信が持てないでいる




特に髪色

特別変異だったのだろうか、白髪に近い銀髪だった

色素が薄いのかと思えば、瞳の色は黒


変に目立ち、異質だった




過去にとらわれたくないという思考が強かったためか、母の姿などがはっきりとは思い浮かばないため自分が誰に似てこんな姿をしているのかわからない


背は小さくて、華奢で、髪が腰まである。




『赤司』などというとんでもない地位や権力・財産を持った家に『家族』として迎え入れてもらったことは、とても光栄であると同時にわたしにはいろんなものが付きまとった



普通だったらあり得ない、膨大な教育を受けさせられた



それに関して征十郎とわたしが一つ違うとしたら、結果だ



先程言った通りわたしは、どんなに頑張っても思うように結果が出ない


いつもいいところで伸び悩む


が、彼は違った



征十郎は何もかもを淡々とこなした

文武両道を掲げ、点数が満点から一点でも下がった日は唯一の肉親である父親からものすごいお叱りを受けていた

弱音を吐くどころか、自分が悪いんだと言ってまたさらに努力を重ねた



とにかく、征十郎は本物の赤司の家の血を引いている者として期待されている


わたしは家族として認められてはいるようだが、期待はされてはいないらしい


理由は簡単



『基本を怠らない限り、怒られないから』だ













ガララッ...と、朝日が入り込んでいる教室を開け、梢は無言で入る。


窓側にある自分の席に座ると、カバンから参考書とノートを取り出す。



カチカチとシャー芯を出す音がやけに大きく聞こえる中、彼女は目の前の問題に立ち向かっていくのであった。



to be continued


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