ふたつの唇-赤司征十郎-
□Captain and vice captain.
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中学一年生になってから初めての夏が本番を迎え、征十朗は始めての全中試合を優勝という形で終えた。
そして、その時ぐらいからわたし達二人は車での送迎を拒んだ
と言っても、わたしは何も言っていない
言い出しは征十郎で、わたしはその隣でただ黙っているだけだった
わたしはここの父親にも、そして征十郎にもあまり意見は言わない
言えない
別に逆らえないというような窮屈を感じているのではないのだが、彼等にわたしのような立場の人間が口を出すのはよろしくないと思っているからだ
しかも二人の会話には嘘もなく、正論のぶつけ合い
考え方の違いが多少あるため、意見の食い違いはたまにあるがどちらも正しいことを言っているのだ
だから、征十郎は最後は父親の力でねじ伏せられていた
しかし今回は父親を上手く説得出来たらしく、送迎という楽な登下校を自らやめた
それは、わたしにもイコールになる
征十郎が右に行けばわたしも右に、左に行けば左に行くのがわたしだ
ピリリリッ
ピリリリッ
彼の部活を待つのも、いつものこと
そのあとは二人で帰るのが基本
それまで教室で一人居残りをしているわたしに、彼は練習が終わるとメールで教えてくれる
『いつもの場所に』
と一言の文字に
『待ってる』
と一言で返信する
ケータイを制服のポケットに忍ばせると、わたしは教室を後にした