ふたつの唇-赤司征十郎-

□Captain and vice captain.
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いつもの場所である正門前に、わたしはいた


たまに征十郎が自分より先に待っていることもあるのだが、まぁ...わたしが待つという感じが普通である



一人でその場に立って待っていると、部活を終えた生徒達が次々と自分の隣を通り過ぎた


その中にはバスケ部の姿もちらほらと見かけた



運動部に所属していてまだこんなにパワーが残っているのかと思うほど、わいわいと騒ぎながら群がって帰っている








...あれ、今日はやけに遅いな



気が付くと、周りにはもう誰もいなかった


空も赤のような黄色のような、夏をうかがわせる色をしていた



そんな空を無心に眺めていると、背後から声が聞こえた








「すまない、待たせたな」


「ぁ、お疲れ征十、郎...?」


「よ」




夕日に照らされた征十郎と、その隣でヒラリと手を上げわたしに挨拶をするもう一人の人物




「えと、あなたは...?」


「おいおい、赤司。
 お前の大先輩のこと知らないってよ?
 まさか、俺のこと一切話してないとかいうことはねーだろーな?」


「虹村さんだ」


「無視かよ!
 つか、名前から伝えるってやっぱり俺の話してねえな!?」


「帝光バスケ部主将だ」


「人の話を聞けェ!!!」



(虹村、先輩...)



一切表情を崩さず言い続ける赤司の髪をわしづかみして怒鳴りつけている虹村。


黒髪の短髪頭はいかにも運動部らしい容姿。

そして切れ長の鋭い目。



一瞬どこか征十郎と似ていると思ったが、自分の後輩であるはずの彼の扱いは乱暴だ



自分の目の前で虹村先輩は怒りオーラを発しながら、征十郎のほっぺたを横に伸ばしている


が、征十郎は慣れているのか動揺せず表情も崩さず、むしろ慣れた手付きで「いい加減にしてください」と言ってその手を払いのけた





...一瞬、呆気にとられた



あの征十郎に手を出している


いくら自分の先輩でバスケ部の主将で、自分がその副主将だからと言ってもこの不思議な光景は何だろう


女子の間からは学年関係なく征十郎のことを『赤司様』などと言っている同姓を見ているからなおさらだ








「...よく見ると可愛いな、お前」


「!?」


我に返ると、自分の目線の高さと同じところに虹村先輩の瞳がある



「にしても、きれーな髪だな...サラッサラじゃねーか!」


「梢、行くよ」


「!ぁ...」



迫りくる虹村に動けなくなってしまっていたわたしは、急に征十郎に手を引っ張られてようやく足が動いた





「んだよ赤司、覗き込むくらいならいいじゃねーか...別に減るモンじゃねーんだからよ」


「...虹村さんの顔、第一印象は特に怖いイメージらしいので梢には無理です」


「なっ...!?
 んだとテメエ赤司!!」


「ちなみに俺は全く怖くもなんともありませんでしたが」


「〜〜〜言ってくれるじゃねーかよ副主将ォ?」









あ、怖い



ぶっちゃけ今、そう思った




でも、なぜだろう



征十郎は楽しそうだった



彼の表情には全く変化はみられない



...でも、わたしにはわかった


これはずっと一緒にいたわたしだけが読み取れる特別なモノなのだろう







その日、虹村先輩は「明日の部活で覚悟しておけ」と言い残してわたし達と別れた


to be continued


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