さんぶん
□Study Equal Magic!
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季節は真冬。年明け。
学期末。
「ねぇーーー!助けてよ知念ちゃんー!」
「……だから、助けてんじゃん。頑張りなって。
あとその呼び方やめて。」
「全然わからない!ヒントちょうだい!」
「もう5個出した!次また出したらほぼ答えだから!ダメです!」
ほとんどの大学生がそうであるように、例に漏れず試験とレポートあと時々バイトに忙殺されている俺の、普通の大学生らしからぬところはただ一つ、
テストの度に何故か勉強を見てくれる(顔の可愛い)同級生がいることだった。
高校は一緒だったけれど、喋るようになったのは大学生になって、同じ大学だと知ってから。
何せ俺は文系だけど知念くんは理系だし。
「…ほんっと…
連絡よこしたと思ったらテスト期間だけだしさぁ…」
「え、何、別なお誘い期待してた?」
「うーん……これで数学の単位落とされたらそれはそれで責任感じるから今んところは期待してない。勉強して欲しい。」
「わ…っかりました。」
恋愛も勉強もてんやわんやな俺を尻目に、いつでも彼は余裕そうだ。
どうせ俺が結局知念くんのこと好きなことなんて、多少なりともバレてるんだろうし。
「知念ちゃんー
テスト終わったらお出かけしようよー」
「しません」
「今からでもいいよカラオケ行こうよー知念ちゃん」
「その呼び方やめてって言ったでしょ」
「…ねぇ、マック食べたくなってこない?」
「なってこない。解き終わったの?」
「んーじゃあ、サイゼは?ミラノ風ドリア!」
「うるさい。解き終わったの?ってば!」
「…チューしてくれなきゃ頑張れないー」
「……は?」
俺の手元のレポート用紙から全く動かなかった知念くんの視線が、初めて上を向いた。
あまりにも急なことで、途端に合ってしまった視線に俺の方も少しビクッとする。
「…え?いや、ごめん。謝る。ごめんって。
やるから勉強、ね?許して?」
さすがに気に触ったのかな、こんなに可愛いけど男だしな、と申し訳なくなってとりあえず謝ると、あ、違うの、って首を振る目の前のくりくりした瞳。
「……なんとなくだけど、
彼女、いるもんだと思ってた。」
…何、それ。
普通、普通はそんなのって。
「ねぇ、知念くん。」
「知念でいいよ別に」
「俺バカだからさ、
そーゆうこと言われると期待しちゃう。」
「涼介の場合、先に言うことがあるんじゃない。」
「…っ、あの、」
そう言えば、彼はテストの度に呼び出す俺の誘いを、断ったことがない。テストが終わったから、と駄々をこねれば食事にもついてくるし、
何より初めに勉強を見ると言い出したの、彼の方だったんじゃないだろうか。
あぁ、そう言えば、彼はその頃からずっと俺の事を、
―涼介、って。下の名前で呼んだ。
いっぱいヒント貰ってたのになぁ。
数学の問題なんかよりよっぽど簡単じゃないか。
「好きです。…まだ付き合ってっては言わない。
これからも勉強教えてくれないかな。」
「…頭良くなる気ないじゃん」
「頭良くなっても、知念が俺と会いたいって思って貰えるまで頑張るから。」
「あはは、いいねそれ。テスト、頑張ろうね。」
「終わったら、」
「うーんカルボナーラ!それ以外は却下で!!」