さんぶん
□リモ告のススメ
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『なにを言うてんねんお前は!!』
「ちゃうねん、突っ込んでくれるかと思うて…」
画面の向こうで呆れ返った顔をするみっちー、直前までリモートの収録をしていたとはいえ、風呂上がり(らしい)だから、なんだかあんまり怖くはない。
メンバー全員でのリモート収録が終わったあと、間髪入れずにみっちーから、テレビ電話がかかってきた。ハイテク機械を通してご対面で、お説教中である。
「ごめんて。…あかんわ、近くにおらんと、つい、気が大きくなってしまうんやな。」
『……』
あ、これもひょっとして口が滑った?おれ、、なんか、余計なことばかり言ってしまってるんやろうか。
やはり電波はわるいみたいで、少しラグがある。ようやく俺の言葉を聞き取ったらしいみっちーは、画面のなかでゆっくり、ふっ、と笑った。
ひょっとしたら、画面のローディングのせいで、やたら時間をかけて笑ったように見えたのかも。
『…いや、確かに、俺も長尾のこと言えんな。』
なんだか、気の抜けたような…毒気のないいい笑顔で、みっちーは僕に…正確にはカメラに、向き直った
「…なに?どしたん?もー怒ってない?」
『…ながお!』
うーん、映像の口の動きと、聞こえてくる言葉がズレてしまうのがもどかしい。
『気ぃおっきくなったついでや!!!
…俺もお前のこと、だいっ好きやで。』
映像の解像度と、みっちーの表情のぎこちなさが、リンクするように。
俺の頭もゆっくりローディング。
やっと、画面の向こうで言われたことを飲み込んで、
バグみたいにゆっくり、顔が赤く染まった、のが、たぶんそろそろ、みっちーにもバレる。
『…流行るんやろ、リモ告』
画面に目をやったら、みっちーも真っ赤になって下を向いていた。
「はやる、かも、しらんけど。」
うん、でも。
「なぁ、みっちー」
『なに、』
「そーゆうのは、直接聞きたいわぁ…」
―がたん!っ!!!
途端、みっちーが携帯を、落とした
真っ暗な画面と、その向こうで、みっちーのため息の気配がする。
『……ホンマ、長尾お前…』
床の上で、雑に拾われた電子機器を、覗き込むような画角にドキッとする。床ドンみたいやな。
『…なんで、近くおらんねん。
お前、次会ったら覚悟せぇよ。』
―抱きしめながら言うて、キスまでしたるからな。
ぶつっ、と、言い逃げのように切り際に呟かれて、
時差で俺まで、大事なケータイをその場に取り落としてしまったのだった。