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□ひとりごと(後)
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本当のことを言えば、樹が北斗のことを好きなことなんてあの時タクシーで一緒にならなくったってこころのどこかで気づいていた。立場上認めたくなかっただけで。


樹は北斗に比較的厳しい。俺らやきょもだったら許されることも北斗には許さないし、きょもへのそれが飴なら北斗へのはムチってところ。
けれど、時々。
北斗が樹のことを見ていないほんの一瞬だけ、それはそれはとてつもなく優しい目をする瞬間があることを、北斗以外だけが知っていた。



だから俺が好きになった北斗は、樹のことを好きな北斗であると同時に、
樹に思いを寄せられている北斗でもあったわけだ。


そんなことは本当は最初っからわかっていた。



勝ち目なんか、なかった。というか、北斗と樹が両想いじゃない空間に、俺の恋心は存在し得なかったのだ。
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