東方神起
□愛・無双華
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歯痒さと悔しさに唇を噛み締め苦しげに瞳を閉じるユノ
チャンミンには分かっていた
ユノが何を思い 何を言わんとしているのか…
それ故…
何も言えず苦々しく奥歯を噛み締めるしかなかった
軍事独裁政権の真っ只中
お国の為にと 戦火にその身を惜し気もなく投じているというのに
肝心の「お国」はあっさりとその命を切り捨てる…
俺達は何の為に戦う?
何を信じて戦う?
戦いから何が生まれる?
戦いの末にあるもの…
それは「憎しみ」でしかないのでは?
憎しみは更なる憎しみを生む
その憎しみの先には何がある…
誰かが終わらせなければ 憎しみの先は憎悪の闇…
ユノ 「 … ここで自害するか …… 捕虜の道を選ぶか………… 果ては…… 」
チャミ 「 弾丸の餌食になって 名誉の死を選ぶか……
ですね… 」
ユノ 「 …… あぁ …… 」
小さく返した力無い返答
捕虜の道を選べば…
おそらくは命は助かるかもしれない
しかしそれは同時に
死よりも辛い拷問に耐える覚悟を決めなくてはならないということ
正に生き地獄を見るのだ
いずれにせよ 「死」 の恐怖からは免れないのか…
愛する家族の待つ祖国へ
帰還することを許されないこの身体
その 愛する祖国に見捨てられた悲壮感…
その感情は憤(いきどお)りにも似て
たまらず爪が食い込む程にユノは拳を握りしめた
チャミ 「 ユノ …… 」
ユノの口から聴きたくなかった
…いや
言わせたくなかった
いつでも最善の方法で皆を先導する男の口から
無念の言葉を言わせたくはなかった
だから 僕が……
僕の呼び掛けに ユノが顔を上げた
チャミ 「 … 僕が…囮になります。 その隙にユノは ……… 逃げて下さい… 」
ユノ 「 なっ…!? 」
チャミ 「 逃げるんです! 」
そんなこと
ユノが納得するわけはない
ことくらい分かってはいた
分かっていたから僕は
ユノに口を挟む隙も与えず 心の中で静かに懇願したんだ
< 貴方だけは
生きて下さい >
と…
>