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□そうさせたのは誰だよ
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階段を降りる途中、背に軽い衝撃を感じた。ぽんっ、と、押し出すような、そんな。

ぐらりと姿勢が傾き、足が次の段を見つけられずに空を切る。そのままとんでもない速さで落ちていく自分を感じ、咄嗟に手すりに手を伸ばすが、無情にも届かなかった。ただ幸いにも落下姿勢が変わり、仰向けで固く冷たい床に叩きつけられた。

気を失うほどじゃないけど、痛い。変に床についた手が、というか手首が熱く痛む。だけどそれより気がかりなのは頭だ。打ち付けた痛みがある。

そっと、床に触れていない、まだ綺麗な方の手を後頭部に当てる。


ぬる、とした、いやな感触があった。


「やば…。」

呟いてから、遠巻きに怯えたようにこちらを窺う視線に気付く。そりゃ、他学年の女子が落下してきたら驚くよな。面倒なことになるのも困るし、騒がれたくもないので、朱のついた手を隠す。

何でもない、というように笑って、しっかりと手すりに掴まりながらも足早に保健室を目指す。信じられない思いで、犯人の顔を思い出しながら。

まあ、中で出血してなきゃ良いよ。外傷で済んでたなら良いさ。大丈夫、大丈夫。平気だって。
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