鋼の錬金術師

□第12話
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狭い通路を進み、出た場所の全貌を見て2人は驚愕に目を見開く。

床に描かれた巨大な錬成陣。

「なんだこりゃ……」

錬成陣の5つの点には血痕が残っている。

「ひょっとして」

『賢者の石を錬成するための……』

「その通り」

肯定の声が聞こえ、振り返るとガシャガシャと鎧の男48が歩いてくる。

「どこの小僧共か知らんが、石について深く知っておるようだな
私はここの守護を任されている者。ナンバー48と、取り敢えず名乗っておこうか」

既に片手に剣を握っている。

「ここに入り込んだ部外者は、全て排除するよう命じられている。悪く思うな小僧共」

「…………そっちこそ」

エドは眉間に皺を寄せ、右手の手袋を取り、両手を合わせる。
アンは腰のホルダーから2丁の銃を取り出す。

手を合わせる音と銃を構える音が同時に部屋に響く。

「『小僧共に倒されても悪く思わないでくれよな/よね』」

エドは機械鎧を刀にしアンは銃を二本構える。

「ほう!錬金術というやつか」

感心して褒める48。

「どれ。手並み拝見……」

瞬時に間合いを縮められ、目を見開く2人。

──速…………──

咄嗟に身を屈めると2人の頭上を、勢いよく剣が通り抜ける。

素早く剣を持ち構え、振り下ろす。

「むん!」

「……っ!!」

右肩と手首を斬りつけられた。

「肩まで鋼の義手か、命拾いしたな。だが!我が愛刀は鋼さえも貫く!!」

「……冗談じゃねぇ!!義手(コレ)また壊したら、ウィンリィにぶっ殺されるじゃねーか!!」

間合いを取り、2人の攻防戦を見詰めるアン。
ただ見詰めている訳では無い。狙っているのだ。

『くそッ……狙えない……』

激しい動きすぎて、鎧の隙間を狙えない。鎧に当たっても跳弾してしまい、意味も無ければ、エドに当たってしまう危険もある。

今度は剣を突き出し、エドはそれを刃で止める。勢いで弾き、足に力を込める。

『来た!』

48の腹部にエドの蹴りが入り、アンの弾が掌に撃ち込まれる

反動で後ろによろける48からは、耳に馴染んだ空洞音。

「む……!」

「『!!』」

目を見開いて驚く2人。

エドは荒い息を吐きながら言う。

「……おいおい、この空洞音……ひょっとしてあんた、その中空っぽなんじゃねーの?」

「──驚いたな、よく気がついた」

「あんたみたいなのと、しょっちゅう手合わせしてるんでね。感覚でわかったよ」

「ほう。表の世界にも、私と同じのがいるのか」

「嫌になるね。俺達以外に魂を鎧に定着させる、なんて事を考える馬鹿がいるなんてよ」

表情を歪めたエドは、自嘲するかのように言った。

「あらためて名乗ろう。私の"48"は死刑囚ナンバー……生前……と言うべきか生身の身体があった時は「スライサー」と巷で呼ばれていた殺人鬼だ
表向きは2年前に、死刑になったことにされている。「スライサー」の腕を買われて、実験材料にされてな。今はここの番犬だ」

『……て事は魂と鎧を仲立ちしている印がどこかにあるんだよね?』

「ふむ……全て説明する必用も無しか」

そう言うと48は口元を覆う布を下げる。

「私は錬金術には詳しくないが、血液自体が魂をつなぎ止め、そして血液中に含まれる鉄分が、鎧の金属部分と同調しているらしいな」

そして頭の蓋を開ける。

「そう。私の頭部の血印……これを壊せば、お前達の勝ちだ」

「弱点を教えてくれるなんて、親切なおっさんだな」

「ふはは。私は戦いに緊張感を求めるタイプなのでな
それと「おっさん」ではない」

訂正しながら、頭の蓋を元に戻す。

『親切のついでに、あたし達をこのまま逃がしてくれないかな〜〜……なんていってみたりね』

「殺人鬼が、目の前の獲物を黙って逃がす訳なかろう。いざ参る!」

3人共体勢を構え直し、お互いを見据える。








さぁ、始めよう。










と、その時。

『ゔっ!?』

「アン??」

アンの右腕には、どこからか飛んできたナイフが刺さっている。
その為に治りきっていないスカーから受けた傷が一気に開き、大量の血が流れ出る。

「ふふふ」

「誰だっ!?」

『……っ』

声をする方は暗くてよく見えないが、カツカツとヒールの音を響かせながら、何者かが近付いて来る。

「あら?躱せると思ったけど……見込み違いだったかしら?」

姿を見せたのは長身の女性。

癖のある長い漆黒の髪は闇を思わせ、革製のパンツと白いシャツに、マントで身を包んでいる。
腰には剣を2本と銃を2丁ずつ下げ、怪しい笑みを浮かべて歩いてくる。

「ふふふ」

笑みの奥から湧き出るような殺意。
彼女からは只者ではないオーラが漂っている。

『……エド、鎧のおじさん任せてもいいかな?』

「ああ」

「おじさんでもない……が、始めようか小僧」

再び訂正した48は剣を握る手に力を込めた。

アンは腕に刺さったナイフを抜いた。当たり前だが、出血は止まるどころか量が増えるばかり。
それを見た女性は薄く笑う。

「死んじゃうわよ?……まぁ、私はそれでもいいんだけどね」

『まだまだ死にたくないよ』

苦笑いを浮かべるアンは、カッターシャツの左袖を引きちぎり、錬成して右腕の止血をする。
すると女性は満足そうに笑い、剣を抜いた。










「アンー!!」

『アリサー!』

「今日は何して遊ぶー?……って……また錬金術〜??」

『あはは〜お父さんが言うんだもん「錬金術と体術は毎日続けろ」って』

「そりゃあ、その年で気持ち悪いぐらい運動と勉強が出来るわけよ」

『気持ち悪いだなんて酷いよぉ〜』
















2015/03/24
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