鋼の錬金術師

□第18話
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エドとアンを撒いたパニーニャは建物の屋根の上に座って、未だに銀時計を弄っていた。

「うーーん。やっぱり、開かないなぁ」

『どうやったら開くんだろうね〜』

いつの間にか隣に座っていたアン。

パニーニャは銀時計に夢中で気付いておらず、当たり前のように返事を返すが、

「うーん…どうだろう…って!!」

アンの顔を見た瞬間、飛び上がって驚く。

「い、居たの!?」

『うん!』

「いつから…」

『覚えてないよ。そんな事より、それ返してよ。銀時計も開けないで』

「中身、気になるんだよねー…って言っても開かないし、いっそ壊してみようか…」

「開けるなっつってんだろ」

その時、後ろからエドの厳しい声が飛んで来た。

「………見られたら、まずい物でも入ってんの?」

「おめーにゃ関係ねぇよ。返せ」

パニーニャの返事は「NO」。口許を両手で引っ張り舌を出す。

その態度に完全にキレたエド。

アンがパニーニャの横からひょいっと飛び退いた次の瞬間、激しい震度が響く。

そして彼女を囲む様にして、屋根から錬成された幾つもの手。

「すごいね。兄ちゃん、何者?」

「錬金術師だ!」

巨大な手が、パニーニャを捕まえようと追ってくるが、

「ほっ」

素早く地面を蹴り、駆け出し、銀時計とペンダントをポケットに入れる。

「あはは!錬金術師と鬼ごっこをするのは、初めてだ!」

「逃がさねぇ!!」

エドは両手を合わせ、パニーニャの目の前にねずみ返しのようになった壁を錬成し、彼女の行く手を阻む。

「わお」

「オラ、捕まえ…」

そして壁に片脚を付き、タンと飛び上がる。

「た!?」

捕まえようとしたエドの両手は空を切り、飛び上がったパニーニャは彼の頭に着地し、踏み付けた。

「はい、終了〜〜〜」

『あたしの存在、忘れないでよねっ!』

「おお」

エドの頭の上に座るパニーニャに蹴りを入れるが、靴の底が掠っただけで逃げられてしまう。











エドが錬金術で追い、アンが体術で攻撃し、そしてパニーニャが軽々と逃げる。

その様子を望遠鏡で眺めているのはウィンリィ。その隣にはアル。

「うわーー。すっごい運動能力。サルみたいだよ、あの女の子」

「(サル対サル&サル…)」

アルが心の中で毒を吐く間にも、街は変成反応の稲妻が光り、建物が破壊されつつあった。

「うまくここに来るかな」

「うん。エドとアンなら、なんとかするでしょ」

同じ頃。

「ぬうおおおおおおおお!!」

「あはははははは!すごい、すごい!」

エドが錬金術でアンが体術で攻るが、パニーニャはそれら全てを相変わらずの余裕で躱して行く。

「こんなにしつこい人達、初めてだよ。あはははは!」

「てめっ…ぜっ…のヤロ…はっ、ぜっ、ちょこまかと…はっ、こちとら病み上がりだっつーの」

『はっ、はっ…』

つい先日まで、怪我を負って入院していたエドとアンは体力が落ちていて、いつもの様に動けていない。息が上がり、汗が噴き出すが、パニーニャは息が乱れるどころか、汗1つ 掻いていない。

「ほらほら息が、あがってるよ〜〜〜!」

「うる…っせぇ!!これで……」

そう言いながら右腕を振り上げて、錬成する。

パニーニャは来るであろう攻撃に身を構えるが、何の変化も起きない。

「……!!」

『…はっ、はっ…』

「………何も出ないよ?どうしたの?ネタ切れ?力尽き?」

「ボコボコ出すだけが錬金術じゃねぇんだよ。たとえば、おめーの足元を、もろい物質に作り変える…とかな!」

刹那パニーニャの足元に亀裂が入り、そこだけが崩れ落ちた。

真下の店に落下した彼女。

突然の出来事にレジで雑誌を読んでいた店の店主が、目を見開いて驚く。

「わしの店!!」

「あっぶな〜〜〜…」

上を見上げると、両手を合わせたアンが、空気中の水を使って氷の檻を錬成していた。

『それから、空気中の水分を集めて凍らす…とかね!』

「姉ちゃんも…!」

それをパニーニャに向かって振り下ろす。

『とりゃあッ!!』

「わわっ」

「『捕った!!』」

勝利を確信したエドとアンは、飛び降りて中を確認するが、捕らえられていたのは、

「店の、オヤジでした」

2人はそのまま、床にべちっと顔から落ちた。

「ほいほいっ……っと」

店から出たパニーニャを待ち構えていたのはアル。

彼女が錬成陣の真ん中に立った事を確認すると、アルは両掌を交差させた。

「待ってたよ」

「!?」

その言葉と同時に発動する術。

「お〜〜〜〜〜〜っ」

手強かったパニーニャが一瞬にして、檻の中に閉じ込められた。

「お見事!」

「ふう」

そこへ息を切らしたエドとアンがやって来た。

「へっへっへ、観念しやがれこのアマ!」

「兄さん、それ、めちゃくちゃ悪役のセリフ」

「ふーん…」

パニーニャは特に慌てた様子も無く、檻を確かめるように指でコンコンと叩くと、一歩下がり、忠告する。

「危ないから、ちょっと離れてて」

「あ?」

腕を組んで疑問符を浮かべるエド。

その時、



カカッ、ガラガラン



檻は破壊され、彼女の右足を見たエドは言葉を失う。

「……!!」

『…機械鎧…』

破れた長ズボンの間から除く鉛色の機械鎧。それに仕込まれた鋭い刃。

「珍しくもないでしょ、こんな街なんだし」

刃をしまうと、今度は左膝から砲弾を発射する。。

「ちなみに左足には、1.5インチカルバリン砲が」

「うそつけーー」

『ぎゃーー!!』

エドはひっくり返り、アンは耳を両手で抑えてしゃがみ、アルは頭を外して驚愕する。

「両足が機械鎧で、あの運動能力…………」

『刃物も砲弾も付いてるのに…』

「うそ…」

その隙にパニーニャは、逃げようと走り出す。

「ほいほいっと」

「あっ…待て!!」

『返せっ!!』

「へっへーー、捕まえてごらん!!」

しかしパニーニャの手首は、がしっとウィンリィに掴まれた。

「逃げようたって、そうはいかないわよ」

絶対に逃がすまいと、握る両手に力を強める。

「う…しまった…」

「でかしたウィンリィ!!」

『その人、絶対に離しちゃダメだから!!』

エド、アン、アルの3人はウィンリィが捕まえたパニーニャの元へと走る。

「ええ…はなすもんですか」

ウィンリィは作ったような笑みを浮かべると、目を輝かせて、パニーニャの手を取る。

「その機械鎧、もっとよく見せてくれるまで離さない♡」

「………」

「…は?」

『…ウィンリィさーん』

走っていたエドとアンとアルは、途中で倒れてしまった。





















ーー2015/06/11
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