ONE PIECE
□Episode2
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カモメが青い空を気持ちよく飛んでいる。そして広い海にポツンと小さな小船。
「はー今日も、いい天気だねーっ」
──広い海を、無謀にも小船で旅する少年少女。なんと海賊の1団を作る"仲間集め"の途中なのだ。──
『こんなに気持ちがいいってのに、この船旅は遭難ってことになるねー』
「まさか、こんな大渦にのまれるとは、うかつだった」
こんなにも呑気な2人は、今、大渦の上に乗っている。
『ほんとにねー』
助けを求めようとあたりを見渡すが、静かな海が広がっているだけ。
「助けてほしいけど、誰もいないし。まー、のまれちまったもんは、しょうがないとして…」
マクルは顎に手を添えて、眉を下げる。
『あたし達さ、泳げないんだよねー』
そこでルフィが笑いながらポンッと手を打った。
「あ!こんな大渦の場合泳げようが泳げまいが、関係ねェか!」
『確かに!泳げても意味無いね!』
「だろ!」
グルグルと渦巻く海。呑気な2人を乗せた小船は、その渦の中心へと飲まれる。
「わっ!!」
『おわっ!!』
「『あーーっ』」
とある島。そこには横顔の髑髏にハートのついた海賊旗がはためく海賊船が停泊していた。
そしてその海賊団の酒蔵に、ピンク髪の少年が酒樽を転がしながら入って来た。
「なに、酒樽が海岸に流れてきただと?雑用コビー」
少年の名前はコビー。この海賊団の雑用をやっている。
「は…はい。まだ中身も入ってるようなので、どうしたらいいでしょうか…」
「そりゃいい!おれ達で飲んじまおう!!」
「しかし兄弟!もし、お頭にバレたらおれ達ァ…」
「なァに、バレやしねェよ!!」
1人の船員の提案で、こっそりお酒を飲む事にした海賊団の船員達。
「この事を知ってんのは酒蔵掃除のおれらと、ヘッポココビーの4人だけだ」
「それもそうだな」
口を割らぬように、船員は念入りに彼を脅す。
「わかってンな、コビー…」
「は…はい、もちろん!ぼ…ぼくは何も見てません!えへへへ…!だ…だからなぐらないでく…」
コビーが拳を握ろうとする船員に慌てていると、
「あーーーーっ!!!!」
「ぬあ!!何だ!!」
「よく寝たーーーーっ!!!」
『だぁーーっ!うるさいよ、ルフィ!!折角寝てたのにさ!』
転がして来た樽を破壊し、中から出てきた2人の少年少女。
少年─ルフィは大きく伸びをしたまみ言う。
「何とか助かったみたいだなァ」
『目ェまわりすぎて死ぬかと思ったー!あははは!』
何故か突然酒樽の中から現れた2人組。頭での理解が追いつかず、4人の船員達は呆然と彼等を見つめる。
「…………!?」
「ん?」
『お?』
「………!?」
「『だれだ、(お前ら/あんたら)』」
「「「てめェらが誰だ!!!」」」
思わず大声で突っ込んだ船員達。
1人がルフィの顔の間近まで、詰め寄る。
「一体、どういう状況で樽から人間が出てくるんだ!?」
その時、大声と共に金棒が回転しながら彼等のいる酒蔵目掛けて飛んできた。
「さぼってんじゃないよ!!!」
ドコォン!!
「ぐお」
「ぎゃあ」
「!!!」
それによって酒蔵は崩れ、2人を入れた樽は吹き飛ばされた。
「うわっ」
『おうっ』
樽は地面やら木やらに衝突し跳ねながら、森の中を転がっていった。
やっと動きが止まった樽の前に、コビーが心配そうに立っていた。
「あの…大丈夫ですか?ケガは?ずいぶん吹き飛ばされちゃいましたけど」
「はははは!」
『大丈夫!結構びっくりしたけどね!あたしはマクル』
「おれはルフィ。ここどこだ?」
呑気に笑う2人は、樽に入って横になったまま問う。
「この海岸は海賊"金棒のアルビタ"様の休息地です。ぼくはその海賊船の雑用係コビーといいます」
「ふーん、そうか。実は、どうでもいいんだけどな。そんなこと」
「はぁ…」
そう言いながら2人は順に樽から出た。
『ねぇコビー。小船持ってない?あたし達のさぁ、渦巻きにのみこまれて壊れたんだ』
「う…渦巻き!?渦巻きに遭ったんですか!?」
「あー、あれはびっくりしたよ。まじで」
溜息混じりに言うが、少しも危機感を感じていないルフィ。
コビーは思わず気の抜けた突っ込みを入れる。
「ふつう死ぬんですけどね…」
『ちょっと楽しかったね!』
「そうだな!もう1回行きてェな!」
「やめてくださいよ!今度こそ死んでしまいますよ!!」
『あはは、そんな事より船は?』
マクルはコビーの忠告を、気にすること無く話を戻した。
「ないこともないんですが…」
そう言って見せてくれたのは、木の板を打ち合わせて作ったような手作り感満載の船。
「なにだこりゃ。棺桶か?」
「一応…船です。ぼくが造ったふねです…!。2年かかってコツコツと…」
「2年かけて?で…いらねェの?」
「この船はここから逃げ出したくて造ったんですが、結局、僕にはそんな勇気ないし…どうせ一生雑用の運命なんです。一応…本当はやりたい事もあるんですけど」
『なら、逃げたらいいじゃん』
簡単に言うが、彼にとってはとても無理難題。首を横に振り、否定する。
「ム…ムリですよ。ムリムリ。もしアルビタ様に見つかったらって考えると、足がすくんで……!!恐くてとても……!!!」
コビーは表情を暗くさせて、語り始める。
「そう…あれが運命の日でした。ぼくは、ただ釣に行こうとしただけなのに、間違えて乗り込んでしまったのが、なんと海賊船!!!
あれから2年。殺されないかわりに、航海士兼雑用係として働けと…!!」
『コビーってドジでバカだね』
「そのうえ根性なさそうだしなー。おれ、お前キライだなー。はっはっは」
「え…えへえへえへえへへへへへ…!!!そんなはっきり…」
全くオブラートに包まずはっきりとした言葉が、コビーのメンタルを突き刺した。
「でも…その通りです。ぼくにも、タルで海を漂流するくらいの度胸があれば………あの…ルフィさんとマクルさんはそこまでして、海に出て何をするんですか?…」
「おれ達はさ、海賊王になるんだ!!!」
コビーの問に満面の笑みで、にいっと笑って答えた。
「え……か!!!か!!!海賊王っていうのは、この世の全てを手に入れた者の称号ですよ!!?」
そして両腕を広げて、声を張る。
「つまり富と名声と力の"ひとつなぎの大秘宝"…あの「ワンピース」を目指すって事ですよ!!?」
『そうだよ?』
「死にますよ!?世界中のその宝を狙ってるんです」
「おれ達も狙う」
「……ム…ムリです!!絶対無理!!ムリムリムリ無理に決まってますよ!!海賊王なんてこの大海賊時代の頂点に立つなんて、できるわけですよ!!ムリムリっ!!」
先程と同じように、いや先程より激しく首を横に振り、全力で否定する。するとルフィはコビーの額を殴った。
「痛いっ!!!ど…どうして殴るんですか!!」
地面に倒れたコビーの額はたんこぶが出来て膨れている。
「なんとなくだ!!」
「…でも、いいや…慣れてるから…えへへへへ…」
コビーははにかんで笑った。
ーー