ONE PIECE
□Episode6
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本日晴天。海を進む2隻の船の上を、カモメが気持ち良さそうに飛んでいる。
「なおったーーーっ!!!」
船首に片足を置いたルフィの大声が、だだっ広い海に響いた。
あんなにボロボロだった麦わら帽子の穴が、綺麗に塞がっている。
「応急処置よ。穴を塞いだだけ。強くつついたりしない限り、大丈夫だと思うけど」
ナミは裁縫道具を片付けながら注意をするが、ルフィはその横で麦わら帽子をつついている。
「いやー。わかんねェ、わかんねェ、ありがとう。あんなにボロボロの帽子をここまで、なお…」
ズボッ
「あ」
「!」
言われたそばから、直した所に穴を開けるルフィの額にナミは針を刺す。
「人の話をちゃんと聞けェ!!」
「ぎゃあああああ」
『あははははっ!』
「はりで刺すなよ、痛ェだろ!!」
「殴っても効かないから、刺すしかないでしょ!?」
「ああ、そりゃ、そうか!」
『確かに、そうだね』
額から僅かに血を垂らしたルフィとマクルは納得した。
すると、ギャーギャーと騒いでいた煩さに寝ていたゾロは起き上がる。
「お前らうるせェな、眠れねェじゃねェか。おれはハラもへってんだ…おい、何か食糧わけてくれよ」
「だいたいあんた達おかしいわよ。航海する気本当にあんの!?食糧も水も持ってないなんて!海をナメてるとしか思えないわ!!」
ナミが呆れる中、ルフィが声を上げた。
「ん!なんか見えるぞ」
「今までよく生きてられたわね」
「まぁ、何とかな」
『だってあたし達強いし』
「関係ないわっ!!」
「おい!島だ!!」
そう言われ、ナミは双眼鏡でその島を確認すると、緑が生い茂っていた。
「ああ、あれはダメね。無人島よ、行くだけムダ。進路はこのまま…」
しかし、ルフィ達を乗せた船は無人島へと勝手に進路変更をしていた。
「仲間になってくれる奴いるかなァ」
「食糧でも積めりゃ上出来だな!ナミの言う事は一理あるぜ、おれ達には明日の心配が足りねェらしい」
「待て!!!」
「孤島に着いたぞ!!」
ナミの話を無視してやって来た島は、やはり森だけの無人島。
『何も無い島だね。森だけかな?』
「だから言ったのに、無人島だって。仲間探すのにこんなとこ来てどうすんのよ」
「おいゾロ、下りて来いよ」
先に船を降りていたルフィは、ゾロに声を掛けるが、
「がーっ、がーっ」
彼はイビキをかいて寝ていた。
「あっ!寝てるよ!!」
『ゾロー島だよー』
ナミは起こしに向かうルフィとマクル服を掴んで言う。
「寝かしといてあげなさいよ。あれでもケガ人なのよ?」
「そりゃ、そうだな。よし、行こう!」
あっさりと踵を返した2人は、グングンと森の方へ足を進める。
「どこによ!」
『森の奥に家があるかもしれない』
「だれもいないってば、猛獣か化物ならいるかもね」
「コケコッコー」
森から出て来たのは、犬に鶏の鶏冠や尾が生えた様な容姿の生き物。
「『ん?』」
「え!?」
「コッ、コケッ」
「なにあれ」
「コケーッ」
奇妙なそれは、ルフィとマクルの間を通り抜けて海岸の方へのしのしと、歩いて行った。
「おい、見ろよ。変わったうさぎだ!!」
「しゃーっ」
更に森へ足を進み入れ、ルフィが捕まえたのはうさぎの耳が生えた蛇。
『ほんとだ!変わってる!』
「そ…そうね!だけど、それ、変わったヘビだと思うけど」
ナミが頭を抱えていると、今度はマクルが指を差す。
『じゃあ、あのライオンは?』
「ガルルルル…」
その先では、豚にライオンの鬣が生えた生き物がすたすたと歩いていた。
「あれは…ブタでしょ!?変わったブタ」
まさに珍獣。
「なんか、この森…へん…!!」
奇妙な生き物だらけの森に、ナミが不安気な声を上げたその時、
「(それ以上、踏み込むな!!)」
どこからか聞こえて来た声。
「『ん?ん?』」
姿無き声に、ナミは困惑する。
「え!?な、何!?今の声。あんた誰よ!!」
「(え?おれ?おれはこの森の番人さ…!!)」
「森の番人?」
『何だそれ』
「(そうとも。命惜しくば、即刻この場を立ち去れい!!)」
「……」
「(おまえ等はあれだろ、海賊)」
「『そう(だ/だよ)』」
「何で森の番人が、そんな事聞くの?」
「(やはり海賊か…いいか、あと1歩でも森へ踏み込んでみろ!!その瞬間!!貴様等は森の裁きを受け、その身を滅ぼす事になるのか?)」
「しるか」
『なんで、あたし達に聞くの』
「何なの、一体…」
「なんか、こいつへんだな」
『うんうん』
「(何だと、この!!麦わら坊主と小娘!!)」
「どこにいるのよ!!出て来いっ!!」
ナミは見えない何者かに攻撃するように、拳を突き出した。
「どっかその辺に」
『いないのかな?』
忠告を受けたのにも関わらず、足を進めたルフィとマクル。
「(オイッ!!!踏み入るなと言った筈だ!!!森の裁きを受けろォ!!!)」
「『?』」
「え」
ズドドォン!!
「うっ」
『ゔっ』
「きゃあ!!!」
突如放たれた2つの砲弾。
「ふんっ!!」
『っ!』
「!!」
1つはルフィの体を貫く事無く跳ね返すが、1つは振り返ったマクルの肩を貫いた。
「(……!?……ええ!!?)」
「「マクル!!」」
慌てたルフィとナミがマクルに駆け寄るが、彼女はいつもの様に笑う。
『はは、大丈夫だよ。でも、びっくりしたー』
「そうか!」
そんな彼女にルフィも笑うが、ナミは怒鳴る。
「「そうか」ってあんた!撃たれたのよ!大丈夫な訳無いじゃない!!」
「マクルが言うなら、大丈夫だ!マクルは嘘つかねーからな!」
どこからかそんな自信が湧いてくるのやら、ニカッと笑うルフィに諦めたナミは言う。
「て言うかあんたのその体、銃も効かないのね!」
「ああ、でもびっくりするから、いやだ」
「(む、麦わら坊主、お前、なんだ!!!)」
ルフィの体に驚いた森の番人に問われるが、彼はそっくりそのまま聞き返す。
「お前こそ、なんだ」
ーー