ONE PIECE

□Episode7
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文句無しの快晴、静かな海の上を2隻の小船はゆったりと進んでいた。

「無謀だわ」

顎に手を添えたナミは唐突にそう言った。

「何が?」

そんな彼女の言葉に船首に座ったルフィは疑問符を浮かべた。

「このまま”偉大なる航路(グランドライン)”に入ること!」

「確かにな!この前、たわしのおっさんから果物いっぱい貰ったけど、やっぱ肉がないと力が」

「食糧の事言ってんじゃないわよ!!」

「このまま酒が飲めねェってのも、なんかつれェしな」

『たまにはお菓子も食べたいしね』

「食糧から頭を離せっ!!」

食べ物の事で頭がいっぱいの3人。ナミは気を取り直して「無謀」の意味を教える。

「私達の向かってる”偉大なる航路(グランドライン)”は、世界で最も危険な場所なのよ。その上、ワンピースを求める強力な海賊達がうごめいている。当然強力な船に乗ってね。船員の頭数にしても、この船の装備のなさにしても、とても無事でいられるとは思わないわ」

『…で?何するの?』

「”準備”するの!先をしっかり考えてね」

マクルの問にそう答えたナミは海図を広げる。

「ここから少し南へ行けば村があるわ、ひとまずそこへ!しっかりした船が手に入ればベストなんだけど」

「肉を食うぞ!!!」

『甘栗たべたい!』

先程ナミに言われたばかりの上に、海賊としての将来を左右する大事な所なのにも関わらず、村と聞いたルフィとマクルの意識は既に食べ物。

兎にも角にも、地図に記された村を目指して船を進める。













「あったなー、本当に大陸が!」

ナミの言う進路通り進めば、本当に大陸があった。驚くルフィに、先に岸へ降りたナミが言う。

「なに言ってんの。当然でしょ、地図の通り進んだんだから」

「へーーっ」

『この奥に村があるの?』

「うん、小さな村みたいだけど」

ルフィとマクルに続いて最後に陸地に降りたゾロは大きな伸びをする。

「ふーーーっ、久しぶりに地面に下りた」

「お前ずっと寝てたもんな」

そしてポツリと呟いた。

「ところで、さっきから気になってたんだが、あいつら何だ」

「!!!」

ゾロの指差す先を見れば、倒れた木の幹に隠れてこちらの様子を伺っている人影。

1人は自分等と同じくらいの歳の少年で、残りの3人は小さな子供だ。

「「「うわああああ、見つかったァ〜〜〜〜〜〜っ!!!」」」

「おい、お前ら!!!逃げるな!!!」

気付かれて慌てて逃げ出す子供達に置いて行かれた少年は、1人佇んでいる。

「………」

ルフィ達4人の視線が痛い。

残された彼は、仁王立ちで名乗り出る。

「おれはこの村に君臨する大海賊団を率いるウソップ!!!人々はおれを称え、さらに称え”わが船長”キャプテン・ウソップと呼ぶ!!!この村を攻めようと考えているなら、やめておけ!!このおれの八千万の部下共が黙っちゃいないからだ!!」

黙って聞いていたナミは呟くように一言言う。

「うそでしょ」

「ゲッ!!ばれた!!」

「ほら、ばれたって言った」

「ばれたって言っちまったァ〜〜〜っ!!おのれ策士め!!!」

1つ1つオーバーなリアクションを取るウソップが面白いのか、ルフィとマクルは腹を抱えて笑う。

「はっはっはっはっはっは、お前面白ェなーーっ!!」

『あははははっ!1人で楽しそう!』

馬鹿にされ、頭にきたウソップは怒鳴る。

「おい、てめェら、おれをコケにするな!!おれは誇り高き男なんだ!!!その誇りの高さゆえ、人が、おれを”ホコリのウソップ”と呼ぶほどにな!!」













「何!?仲間を!?」

ウソップの案内で一行は今、村の飯屋で昼食を取っている。

年齢が近い為か、彼等が打ち解けるまでの時間は短かった。

「仲間とでかい船か!」

「ああ、そうなんだ」

「はーーっ、そりゃ大冒険だな!!」

『どっか船ないかな?』

「まァ、大帆船ってわけにゃ行かねェが、船があるとすりゃ、この村で持ってんのはあそこしかねェな」

「あそこって?」

「この村に場違いな大富豪の屋敷が1軒たってる、その主だ。だが主と言っても、まだいたいけな少女だがな。病弱で…寝たきりの娘さ…!!」

「え……どうして、そんな娘がでっかいお屋敷の主なの?」

ナミがウソップに訊ねたその時、

「おばさん!!肉追加!!」

「おれも酒っ!!」

『あたしプリン!!』

そう言って注文を頼む3人に、ウソップは怒声を飛ばす。

「てめェら、話、聞いてんのか!?!」

気持ちを切り替え、彼はナミの問に対して静かに語り始めた。

「……もう1年くらい前になるかな、かわいそうに病気で両親を失っちまったのさ。残されたのは莫大な遺産と、でかい屋敷と、数十人の執事達…!!どんなに金があって贅沢できようと、こんな不幸な状況はねェよ」

「………やめ!」

「!?」

話を黙って聞いていたナミは、机を軽く叩いた。

「この村で船の事は諦めましょ。また別の町か村をあたればいいわ」

『そうだね!急ぐ旅でもないし!』

「肉食ったし!いっぱい買い込んでいこう!」

彼女の意見に皆、次々に賛成をする。この村では必要な物資を調達する事だけに決定だ。

「ところでお前ら、仲間を探してると言ってたな……!」

「うん、だれかいるか?」

ウソップは自分を親指で示し、口端をあげる。

「おれが船長(キャプテン)になってやってもいいぜ!!!」

「「「『ごめんなさい』」」」

「はえェな、おい!!」

即答で3人揃って頭を下げられ、ウソップの顎は外れた。












食後のお茶でのんびりと過ごすルフィ達。

そんな中、ばんっ!!、と扉が勢いよく開く音に、彼等は首を傾げた。

「?」

「ん?」

『お?』

「ウソップ海賊団、参上っ!!」

「なにあれ…」

「さー、何だろうな…」

『悪い人達じゃ無さそうだね』

ウソップ海賊団と名乗るのは海岸で見かけた3人の子供達。彼等はルフィ達の座る席まで歩み寄ると、表情を険しくさせた。

「?……!!おい…キャプテンがいないぞ…」

「まさか…やられちゃったのかな…!!」

3人は勇気を振り絞り、言葉を詰まらせながらもおもちゃの剣を振り上げた。

「お…おい、海賊達っ!!」

「われらが船長、キャプテン・ウソップをどこへやった!!」

「……」

「キャプテンを返せ!!!」

ティーカップをテーブルに置き、ルフィは満足そうに言う。

「はーーっ、うまかった!肉っ!!」

「!!」

「え…にく…って!?」

「まさか…キャプテン……!!」

ルフィの発言に勘違いをして、騒ぎ始める子供達。その純粋さにナミは笑いをかみ殺す。

「ぷっ……」

「お前らのキャプテンならな…」

「「「な…何だ!!何をした……!!」」」

血相を変える子供達。ゾロは不敵に笑い、声色を少し低くして言葉を続ける。

「さっき………喰っちまった」

『ナミがね』

「「「ぎいやあああああ。鬼ババァ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」」」

「何で私を見てんのよ!!!」

本物の鬼婆の様な形相で怒鳴られた子供達は泡を吹いて気絶していた。

「「「……………………!!」」」

ナミはマクルの方を向いて机をバンっと叩く。

「あんた達がバカなこと言うから!!」

「はっはっはっはっはっは!!」

『あはははっ!!ナミが鬼ババだって!!』

「あんたがそう思わせたんでしょっ!!」















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