ONE PIECE

□Episode8
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「暗殺なんて聞こえの悪い言い方はよせ、ジャンゴ」

「ああ、そうだった。事故…!事故だったよな。“キャプテン・クロ“」

ジャンゴはクラハドールの事を“キャプテン・クロ“とそう呼んだ。

「キャプテン・クロか……3年前に捨てた名だ。その呼び方もやめろ。今は、お前が船長のハズだ」

「「『(………)』」」

崖の上から話を盗み聞いているルフィとマクルと、そしてウソップ。

「おい、あいつら何言ってんだ…?」

「………そんな事はおれが聞きてェよ。でも待てよ………!!キャプテン・クロって名は知ってる…!」

『誰?』

「計算された略奪をくり返す事で有名だった海賊だ…!!でも、あいつは…!!3年前に海賊に捕まって処刑されたと聞いたぞ…!!」

処刑されたのに、今、ここにいる?

クラハドールがクロと確定した訳では無いが、意味が分からない。

話を聞かれているとは知らないクラハドール達はベラベラと喋り続ける。

「しかし、あんときゃびびったぜ」

「ん?」

「あんたが急に海賊をやめると言い出した時だ。あっという間に部下を自分の身代わりに仕立て上げ、世間的にキャプテン・クロは処刑された!!そして、この村で突然船を下りて、3年後にこの村へまた静かに上陸しろときたもんだ」

これまでの経緯を懐かしむ様に話すジャンゴ。

彼の話からすれば世間で処刑されたと知られているキャプテン・クロは偽物で、本物のキャプテン・クロは死んでおらず、ここで本名を伏せて生きていたという事。

そして、良からぬ事を考えている。

「まァ、今まであんたの言う事聞いて間違ったためしはねェから、協力はさせて貰うが、分け前は高くつくぜ?」

「ああ、計画が成功すればちゃんと、くれてやる」

「殺しなら任せとけ!」

「だが、殺せばいいって問題じゃない。カヤお嬢様は、不運な事故で命を落とすんだ。そこを間違えるな。どうも、お前はまだ、この計画をハッキリと飲み込んでいないらしい」

「バカを言え。計画なら完全にのみこんでるぜ。要するに、おれはあんたの合図で野郎どもと村へ攻め込み、お嬢様を仕留めりゃいいんだろ?そして、あんたがお嬢様の遺産を相続する」

「バカが…!!頭の回らねェ野郎だ…!!他人のおれがどうやってカヤの遺産を相続するんだ」

「がんばって相続する」

「がんばってどうにかなるか!!ここが一番大切なんだ!!」

「殺す前に!!お前の得意な催眠術で、カヤに遺書を書かせるんだ!!『執事クラハドールに私の財産を全て譲る』とな!!それで、おれへの莫大な遺産の相続は成立する………!!ごく自然にだ」

ニヤリと口端を上げたクラハドールはこうだと言う。

己を死んだと見せかけて船を降りてから、この島で過ごした今までの3年間。その期間をフルに活用して"信頼"を手に入れた。

そんな遺書が残っていてもおかしくは無い状況を作り上げた。と。

そこでジャンゴは言う。

「おれなら一気に襲って、奪って終わりだがな」

しかしそれでは駄目なのだ。また野蛮な海賊に逆戻り。

金は手に入れる事が出来ても政府に追われ続ける事に変わりはない。

「おれは政府に追われること無く、大金を手にしたい。つまり平和主義者なのさ」

そんなもの表面上は平和を取り繕っていても、中身は野蛮な海賊の略奪行為。

こんなふざけた行為が許される訳が無い。












「…………えらいことだ………!!!えらいこと聞いちまった………!!!」

早々と波打つ鼓動に、滴る汗。確実に"ヤバイ"。

「おい、何だ。なんかやばそうだな」

『これは…事件のニオいがする』

「お前等ずっと聞いてたんじゃねェのか!!やばすぎるぜ本物だ!!あいつら!!ずっと狙ってやがったんだ…………!!!カヤの屋敷の財産を、ずっと3年前から!!!そして、あの執事は…キャプテン・クロ!!生きてたんだ…!!!おれは大変な奴を殴っちまった………!!殺される!!!」

深刻な事態に頭を抱えたウソップは顔色を変える。

「カヤも殺される!!!村も襲われる
やべェ…!!マジでやべェ…!!!!」

言い知れぬ恐怖に声が震えた。

そんな中、ルフィとマクルは立ち上がった。

「……おい!立つな、見つかるぞ」

「『おい、お前ら!!!お嬢様を殺すな!!!!』」

何をするのかと思えば、彼等はクラハドール立ちに向かってそう叫んだ。

「誰だ…!!!」

「………!!!」

サァーっと血の気が引いていくのがわかる。目からは涙が流れ出た。

「ばかやろう!!見つかっちまったじゃねェか!!早く隠れろ殺されるぞ!!!」

必死に2人を引っ込めようと腕を引っ張るが、当然の如くウソップも見つかってしまう。

「………やあ、これは…ウソップ君じゃありませんか…」

「うわあああっ!!おれまで見つかっちまった!!!」

「なにか…聞こえたかね?」

クラハドールのただならぬ威圧に威圧されたウソップは、必死に聞いていないと豪語する。

が、

「『ぜんぶ聞いた』」

「おいっ!!」

腕を組んで堂々と言い切るルフィとマクルに、ウソップはツッコむ。

どうしよう、とギャーギャー騒いでいる彼等にジャンゴが徐に声を掛けた。

「聞かれたか…しかたねェな…おい、貴様ら。この輪をよく見るんだ」

そう言ったジャンゴは、紐から下げた輪をゆっくりと左右に振る。

『なに』

「なんだ」

「や…やばいぜ、飛び道具だ!!殺されるっ!!」

「ワン・ツー・ジャンゴでお前らは眠くなる。ワーン…ツー…」

「隠れろ!!やられるぞ!!」

ウソップは頭を抱えて奥に引っ込むが、ルフィとマクルは素直にその輪を眺めている。

「ジャンゴ」

カクン、と2人の頭は項垂れ、小さく寝息が聞こえた。

ついでにジャンゴも。

そんな彼をクラハドールは片手で支えながら起こす。

「おい起きろ。まだ、そのクセ直ってねェのか。」

そして崖の上で催眠にかかって眠ったルフィ達の体は、頭の重みに耐えられずに前のめりに倒れて行く。

しかし運の悪い事に、2人が立っていたのは崖の淵。

「え!?ど…どうしたんだ。落ちるぞ!!!」

ウソップは手を伸ばすがもう遅い。



ドゴォン!!



2人は頭から真っ逆さまに海岸に落ちてしまった。

「!!!おい!!お前等っ!!!!大丈夫か!!?」

「あーあー…殺すつもりはなかったんだがな…頭からイッたか…この高さじゃ助からねェ」

寝起きのジャンゴは、ぼーっとする頭で冷静に状況を把握する。

「もう1匹どうする。殺しとくか」

「必要ない。あいつがどう騒ごうと無駄な事だ」

そしてクラハドールは、ウソップが聞いているというのに構うこと無く続ける。

「明日の朝だ、ジャンゴ…夜明けとともに村を襲え。村の民家も適度に荒らしてあくまで事故を装い、カヤお嬢様を殺すんだ」

「……!!!明日…」

「聞いたとおりだ、ウソップ君…君が何を聞こうとも、私の計画に何ら影響はない」

「………!!くそ…くそっ!!!うあああああああ!!!」

どうしたらいいのか分からないまま、ウソップは駆け出した。

「大丈夫なのか?」

「当然だ。おれの計画は狂わない」

その場に残されたのは、クラハドールとジャンゴ。そして、眠ったままのルフィとマクルだった。










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