鋼の錬金術師

□第9話
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「俺ぁ仕事が山積みだからすぐ中央に帰らなきゃならん」

「私が東方司令部(ココ)を離れる訳にはいかないだろう」

「大佐のお守りが大変なのよ。すぐサボるから」

「あんなやばいのから守りきれる自信ないし」

「「「以下同文」」」









納得しざるおえない理由を告げられ、列車の座席でエドは大量の汗を流していた。

だからって…………なんでこのおっさんがついて来るんだよ…………

向かいの座席にはアームストロングがドカッと2人席を占領して座っている。
因みにアンはエドの横に嫌そうな顔で座っている。









時は遡り、東方司令部。

アームストロングが豪快に涙を流す。
それを目にしたアンとエドは青ざめ、ハボックは呆れた顔をし、ロイは額に手を当て、ヒューズは無表情で、リザは最早見て見ぬフリ。

「聞いたぞエドワード・エルリック!!アン・ケリー!!」

そう叫びながら2人を抱き締めようとする為、アンはエドを前へ押して犠牲にする。

「ギニャーー」

『ごめんねエド』

抱き締められた体からは骨の折れる嫌な音がするが、アームストロングは気にすること無く続ける。

「母親を生き返らせようとしたその無垢の愛!さらに己の命を捨てる覚悟で弟の魂を錬成したすさまじき愛!我輩感動!!」

「寄るな」

再び抱きつこうとするアームストロングの顔面を足で止める。
その時の怒りの表情はアンに向けられていた。

エドは青筋を幾つも立ててロイに詰めよる。

「口が軽いぜ大佐」

「いやあ…………あんな暑苦しいのに詰め寄られたら君達の過去を喋らざるをえなくてね……」

そんな会話が成されている間、アンはアームストロングから逃げていた。

「アン・ケリー!逃げるでない!」

『来るなぁぁああああ〜〜』

「という訳で
その義肢屋のところまで我輩が護衛を引き受けようではないか!」

「『はぁ/えぇ!?』」

ハンカチで涙を拭いながらの発言に、思わず声が上がった。

「なに寝ボケたこといってんだ!護衛なんていらねーよ!」

『護衛なんて無くても自分達の身ぐらい自分達で守れるよ!』

「エドワード君、アン。
またいつスカーが襲ってくるかもわからない中をその身体で移動しようと言うのよ、奴に対抗できるだけの護衛をつけるのは当然でしょう?」

「それにその身体じゃアルを運んでやることもできないだろ?」

つい先程スカーに殺されかけた3人。
今はまだそのスカーが襲って来ないとも言いきれない状況である。

エドの右腕は破壊されアルも体の一部を破壊され、とても錬金術が使える状態ではない。
アンは錬金術が使えない訳では無いが、とても戦える様な体調でも無い。

軍が護衛をつける理由もわかる。
それに今の自分達ではアルを運んでやれない。
仕方が無いが黙って従うしかないのだろうが、

「だったら別に少佐じゃなくても!」

他にも軍人がいる中で、何故アームストロングなのか。

「俺ぁ仕事が山積みだからすぐ中央に帰らなきゃならん」

「私が東方司令部(ココ)を離れる訳にはいかないだろう」

「大佐のお守りが大変なのよ。すぐサボるから」

「あんなやばいのから守りきれる自信ないし」

「「「以下同文」」」

「決まりだな!」

そう言いながらエドは頭にばんと手を置く。

「勝手に進むきめんなよ!!」

「子共は大人の言うことをきくものだ!」

「子供扱いするな!!
この……アルもアンもなんかいってやれ!」

「兄さん!!アン!!僕この鎧の身体になってから初めて子供扱いされたよ!!」

『おめでとーう!!』

鎧の体になってからは年相当に扱われた事が無かったアルは、嬉しそうに目を輝かせて喜ぶ。
アンもまるで自分の事のように嬉しそうに笑っている。

「ダメだこりゃーー」

ズッコケるエドに追い討ちをかける様にロイが黒いオーラを放つ。

「ははははは。まだ駄々をこねると言うのなら命令違反という事で軍法会議にかけるが、どうかね?」

「うおお!!汚ぇ!!」

「うむそうと決まれば早速荷作りだ」

鼻歌を歌うアルは木箱に詰められ、荷物札が付けられた。

「荷物扱いの方が旅費より安いからな!」

──この身体になってから初めて荷物扱いされた……──

「弟よ……」

アルはショックを受け、エドとアンは落ち込む。

「エドワード・エルリックもアン・ケリーも早く支度しろ。ハンカチ持ったか?」

「子供扱いするなってばーーー!!」

納得はできないが、アルを運ぶ為にも軍法会議にかけられない為にも受け入れるしかないのだった。






──まったく踏んだり蹴ったりだ……──

列車の中で溜息を吐くエドは東方司令部内の事を思い出していた。

コンコンと窓を叩かれ、視線を向けるとヒューズが片手を小さく挙げて立っていた。

「『ヒューズ中佐/さん!』」

「よ」

「ども」

エドとアンは窓を開けて顔を出す。

「司令部のやつらやっぱり忙しくて来れないってよ。代わりに俺が見送りだ」

『そうなんだ〜』

ヒューズを見上げて嬉しそうに笑うアンはまるで、父親に甘える小さな子供の様だ。

「そうそうロイから伝言をあずかってきた」

「大佐から?」

「「事後処理が面倒だから私の管轄内で死ぬことは許さん」以上」

「「了解絶対てめーより先に死にませんクソ大佐」って伝えといて」

「それからアンには「私に何度も「またか」と言わせるな」だそうだ」

『「またか」って?』

「どう考えても怪我だろ。お前が怪我する度に大佐の野郎「またか」って言ってるしよ
今回はそれで済まされる様な怪我じゃねーけどな」

「そういう事だ!」

『「心配ご無用。リザさん困らせたら雪で生き埋めにするよ」って伝えといて』

悪戯に笑うアンに一瞬ポカンとするが、ヒューズは笑い声を上げた。

「あっはっは!
憎まれっ子世にはばかるってな!おめーらもロイの野郎も長生きすんぜ!」

『ねぇヒューズさん、さっきさ……』

アンの言葉を遮るように汽車が煙突から煙を吹き、駅員が笛を鳴らす。

「どうした?」

『ううん。今度でいいや』

「そうか。じゃ道中気を付けてな
中央に寄ることがあったら声かけろや」

笛の音がなり続ける中、ビッと敬礼でし、3人を見送る。

「左手で失礼」

エドは左手で、アームストロングとアンは右手で敬礼を返す。

汽車はリゼンブールに向かってゆっくりと出発した。















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