鋼の錬金術師

□第15話
1ページ/4ページ









「う〜〜〜〜〜〜お尻痛い〜〜〜
あいつらよくこんなのに、しょっちゅう乗ってられるわね」

エドに頼まれた出張整備の為中央に来たウィンリィは、列車の硬い椅子に長時間座っていた事より痛めたお尻を擦った。

駅のホームや改札は行き交う人々で溢れている。それは自分の故郷リゼンブールではお目にかかる事の出来ない光景だ。

「さすが中央は人が多いなぁ……エドの奴「西口で目印が立ってるからすぐわかる」って言ってたけど目印って………あ、目印…………」

人混みに揉まれ、掻き分けながら目印を探す。
すると視界に、一際目立つ巨大な身体のアームストロングが辺りを見回しているのが入った。

「アームストロング少佐!」

ウィンリィはアームストロングに手を振った。

「おおウィンリィ殿!」

アームストロングは律儀に敬礼する。

「リゼンブールではお世話になりましたな」

「いえいえ。エルリックのバカ兄弟とアンがお世話になりました」

2人はエドの待つ場所へ向かうべく、中央の町を歩く。

「それにしてもエドの奴こんな所まで呼び出しておいて、迎えにも来ないなんて!」

「仕方ありますまい、今は動けない状態ですからな」

「それなんですけど「動けない」ってどういう事ですか。あいつ何も言わないんですもの」

「いやまぁなんと言いましょうか……………ちと入院してましてな」

「入院!?」

驚いた後に、納得した表情で頬に手を当てる。

「そう……あいつとうとう、犯罪を起こして少年院に……どうせアンも一緒なんでしょ。あの子も軍人なんだからちょっとは……」

勝手に勘違いして、勝手に納得しているウィンリィに、アームストロングがきちんと訂正を入れる。

「その院ではありません」

「え…………病院…………?」

唖然とするしかなかった。










《だ・か・ら・よ!》

ヒューズがでへっとしたニヤケ顔で電話をする相手は、東方司令部のロイ・マスタング。

「うちの娘が3歳になるんだよ!」

青筋を立てるロイは、電話相手のヒューズに静かに言う。

「………………ヒューズ中佐………………私は今仕事中なのだが」

《奇遇だな、俺も仕事中だ》

何度も何度も言っているのにも関わらず、仕事中に軍の回線でヒューズは懲りずに娘と嫁自慢の電話を掛けてくる。

「いや、もう毎日、かわいいのなんのってよぉ!」

《わかったから娘自慢の電話をかけてくるな!しかも軍の回線で!》

「娘だけじゃない!妻も自慢だ!」

《………………錬金術で電話口の相手を焼き殺す方法は、ないものかなヒューズ》


《おーおー。焔の錬金術師はこわいねぇ──っと錬金術師といえばスカーはどうなった?》


同じ頃、ハボックはスカーの捜索していた。

「こいつですかね」

憲兵は遺体に被せられた布を少しあげてみせる。そこから見える手は黒焦げ。

「ぐちゃみそでわかんねぇよ」

ハボックは煙草をふかしながら言った。


「まだ、発見されてないがかなり大規模な爆発で、身元不明の遺体も多数出てるからな。あるいはその中に……東部近隣での目撃情報も無いからやはり、死んだものとする意見が大勢を占めている」

《じゃあエルリック兄弟とアンの護衛(ガード)は解けるのか?》

「ああ、彼らが中央にいるのなら、中央の担当に判断を任せよう」


「その担当だがな、国家錬金術師を統制する上層部の奴らが、スカーに殺られて人員不足になっている」

「ほぉ……」

その言葉に、ロイは興味ありげに返事をした。

「マスタング大佐の中央招聘も、近いって噂だぜ」


「中央か、悪くないな」


「気を付けろよ。その歳で上層部に食い込むとなると敵も多くなる」


「覚悟はしている」


「おまえさんを理解して、支えてくれる人間を一人でも多く作っとけよ」

そこでヒューズは余計な一言を付け加える。

《だから早く嫁さんもらえ》

「やかましい!!」

怒鳴りながら、受話器を叩きつけるようにして電話を切る。

そんなロイにリザは静かに注意する。

「大佐、お電話はお静かに」










「ヒューズ中佐〜〜また、家庭自慢の電話ですか?」

電話の受付嬢は軍の回線を使い自慢話をするヒューズを、注意する。

「何?君もうらやましい?うちの娘が3歳になるんだよ〜〜〜〜〜。写真見る?」

「見ません!」

受付嬢に娘の写真を見せようと胸ポケットに手を入れるが、きっぱりと斬捨てられてしまう。

「プライベートな会話に、軍のを回線を使わないでくださいよ、もう……聞いてる方が、恥ずかしいったら………………ヒューズ中佐ヒトサンニイマル……と」

そう言われるもヒューズは、娘の写真を目の前に上の空。

「上の人に盗聴されたら、減給ものですよ!」

「減給ごときで俺の愛は、とめられんのだ。わはははは!───あ。ロイの野郎にエドとアンの入院の事、話すの忘れてたな。ま、いっか」

ヒューズは歩きながら呑気に後頭部をぽりぽりと掻いた。










病院に到着したウィンリィは、幼馴染の病室に入って驚愕する。

「そんな!」

そこにはミイラのように包帯でぐるぐる巻きにされたエドが、ベッドに横たわり、その奥では点滴に繋がれたままのアンがベッドの上で眠っていた。

「……こんな大ケガで、入院してるなんて聞いてないよ!」

驚きのあまり、持っていた荷物を床に落とす。

「いや本来は、このケガの半分以下だったのだが……」

「エド!!」

エドはウィンリィに説明をする。


「何ッ第五研究所に忍び込んで、大怪我をしたと!?」

「はい」

ブロッシュにそう聞かされたアームストロングは、すぐさま病室に駆け込み、力の限りエドを抱き締める。

「心配したぞ。エドワード・エルリックーーーーっっ!!!」

「ギャーー!!」

そしてエドの全身の骨は悲鳴をあげた。



「という訳だ」

軍服を脱ぎ、ポーズを取るアームストロングを、ウィンリィは睨んだ。

「もーびっくりさせないでよ」

「俺に言うな俺に!!くそ……おかげで入院が長引いちまった」

アームストロングによって負わされた怪我の包帯を取り始めた。

「鍛え方が足りんのだ!」

「少佐と一緒にしないでください!」

ウィンリィは1つ怒鳴ると、溜息をつきながらエドを見る。

「それにしても…………少佐の分を差し引いたってひどいケガじゃない」

そう言いながらアンが寝ているベッドに腰掛け、彼女の髪の毛を撫でる。

「たいした事ねーよ。こんなのすぐ直るケガだ」










ーー
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ