鋼の錬金術師
□第15話
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「う〜〜〜〜〜〜お尻痛い〜〜〜
あいつらよくこんなのに、しょっちゅう乗ってられるわね」
エドに頼まれた出張整備の為中央に来たウィンリィは、列車の硬い椅子に長時間座っていた事より痛めたお尻を擦った。
駅のホームや改札は行き交う人々で溢れている。それは自分の故郷リゼンブールではお目にかかる事の出来ない光景だ。
「さすが中央は人が多いなぁ……エドの奴「西口で目印が立ってるからすぐわかる」って言ってたけど目印って………あ、目印…………」
人混みに揉まれ、掻き分けながら目印を探す。
すると視界に、一際目立つ巨大な身体のアームストロングが辺りを見回しているのが入った。
「アームストロング少佐!」
ウィンリィはアームストロングに手を振った。
「おおウィンリィ殿!」
アームストロングは律儀に敬礼する。
「リゼンブールではお世話になりましたな」
「いえいえ。エルリックのバカ兄弟とアンがお世話になりました」
2人はエドの待つ場所へ向かうべく、中央の町を歩く。
「それにしてもエドの奴こんな所まで呼び出しておいて、迎えにも来ないなんて!」
「仕方ありますまい、今は動けない状態ですからな」
「それなんですけど「動けない」ってどういう事ですか。あいつ何も言わないんですもの」
「いやまぁなんと言いましょうか……………ちと入院してましてな」
「入院!?」
驚いた後に、納得した表情で頬に手を当てる。
「そう……あいつとうとう、犯罪を起こして少年院に……どうせアンも一緒なんでしょ。あの子も軍人なんだからちょっとは……」
勝手に勘違いして、勝手に納得しているウィンリィに、アームストロングがきちんと訂正を入れる。
「その院ではありません」
「え…………病院…………?」
唖然とするしかなかった。
《だ・か・ら・よ!》
ヒューズがでへっとしたニヤケ顔で電話をする相手は、東方司令部のロイ・マスタング。
「うちの娘が3歳になるんだよ!」
青筋を立てるロイは、電話相手のヒューズに静かに言う。
「………………ヒューズ中佐………………私は今仕事中なのだが」
《奇遇だな、俺も仕事中だ》
何度も何度も言っているのにも関わらず、仕事中に軍の回線でヒューズは懲りずに娘と嫁自慢の電話を掛けてくる。
「いや、もう毎日、かわいいのなんのってよぉ!」
《わかったから娘自慢の電話をかけてくるな!しかも軍の回線で!》
「娘だけじゃない!妻も自慢だ!」
《………………錬金術で電話口の相手を焼き殺す方法は、ないものかなヒューズ》
《おーおー。焔の錬金術師はこわいねぇ──っと錬金術師といえばスカーはどうなった?》
同じ頃、ハボックはスカーの捜索していた。
「こいつですかね」
憲兵は遺体に被せられた布を少しあげてみせる。そこから見える手は黒焦げ。
「ぐちゃみそでわかんねぇよ」
ハボックは煙草をふかしながら言った。
「まだ、発見されてないがかなり大規模な爆発で、身元不明の遺体も多数出てるからな。あるいはその中に……東部近隣での目撃情報も無いからやはり、死んだものとする意見が大勢を占めている」
《じゃあエルリック兄弟とアンの護衛(ガード)は解けるのか?》
「ああ、彼らが中央にいるのなら、中央の担当に判断を任せよう」
「その担当だがな、国家錬金術師を統制する上層部の奴らが、スカーに殺られて人員不足になっている」
「ほぉ……」
その言葉に、ロイは興味ありげに返事をした。
「マスタング大佐の中央招聘も、近いって噂だぜ」
「中央か、悪くないな」
「気を付けろよ。その歳で上層部に食い込むとなると敵も多くなる」
「覚悟はしている」
「おまえさんを理解して、支えてくれる人間を一人でも多く作っとけよ」
そこでヒューズは余計な一言を付け加える。
《だから早く嫁さんもらえ》
「やかましい!!」
怒鳴りながら、受話器を叩きつけるようにして電話を切る。
そんなロイにリザは静かに注意する。
「大佐、お電話はお静かに」
「ヒューズ中佐〜〜また、家庭自慢の電話ですか?」
電話の受付嬢は軍の回線を使い自慢話をするヒューズを、注意する。
「何?君もうらやましい?うちの娘が3歳になるんだよ〜〜〜〜〜。写真見る?」
「見ません!」
受付嬢に娘の写真を見せようと胸ポケットに手を入れるが、きっぱりと斬捨てられてしまう。
「プライベートな会話に、軍のを回線を使わないでくださいよ、もう……聞いてる方が、恥ずかしいったら………………ヒューズ中佐ヒトサンニイマル……と」
そう言われるもヒューズは、娘の写真を目の前に上の空。
「上の人に盗聴されたら、減給ものですよ!」
「減給ごときで俺の愛は、とめられんのだ。わはははは!───あ。ロイの野郎にエドとアンの入院の事、話すの忘れてたな。ま、いっか」
ヒューズは歩きながら呑気に後頭部をぽりぽりと掻いた。
病院に到着したウィンリィは、幼馴染の病室に入って驚愕する。
「そんな!」
そこにはミイラのように包帯でぐるぐる巻きにされたエドが、ベッドに横たわり、その奥では点滴に繋がれたままのアンがベッドの上で眠っていた。
「……こんな大ケガで、入院してるなんて聞いてないよ!」
驚きのあまり、持っていた荷物を床に落とす。
「いや本来は、このケガの半分以下だったのだが……」
「エド!!」
エドはウィンリィに説明をする。
「何ッ第五研究所に忍び込んで、大怪我をしたと!?」
「はい」
ブロッシュにそう聞かされたアームストロングは、すぐさま病室に駆け込み、力の限りエドを抱き締める。
「心配したぞ。エドワード・エルリックーーーーっっ!!!」
「ギャーー!!」
そしてエドの全身の骨は悲鳴をあげた。
「という訳だ」
軍服を脱ぎ、ポーズを取るアームストロングを、ウィンリィは睨んだ。
「もーびっくりさせないでよ」
「俺に言うな俺に!!くそ……おかげで入院が長引いちまった」
アームストロングによって負わされた怪我の包帯を取り始めた。
「鍛え方が足りんのだ!」
「少佐と一緒にしないでください!」
ウィンリィは1つ怒鳴ると、溜息をつきながらエドを見る。
「それにしても…………少佐の分を差し引いたってひどいケガじゃない」
そう言いながらアンが寝ているベッドに腰掛け、彼女の髪の毛を撫でる。
「たいした事ねーよ。こんなのすぐ直るケガだ」
ーー