鋼の錬金術師

□第5話
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ある車両では男が後部車両に無線をかけていた。
しかしその相手は先程エドがボコした為無線に応答することは無い。

「あれおかしいな後ろの奴らでねぇ」

それを知らない男は後部車両へと向かう。

「ちょっと見てくるわ」

「おう」

「……たくよー
定時連絡はちゃんとしろって……」

ぶつぶつと呟きながら歩いていると突然ぬっと現れた鎧に驚き、青ざめ、咥えていた煙草を落とす。

「うっ……うわあああああああ」

「ちょっと待って……」

「跳弾してあぶないよ……って遅いか」

「いいいでェェ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ」

男が驚きのあまり乱射した弾は鎧に適う筈も無く、跳弾して自らの足を貫く。

「おいどうし……でっ……」

騒ぎを聞きつけた男がやって来るが、同じく鎧のアルに驚いて乱射する。

「うわあああああ!!

……って跳弾いてェーーーーー!!!!」

「おじさんたちアホですか」

同じく跳弾した弾で負傷した男は先程倒れた男と仲良くのたうち回っていた。









一等車両では眼帯の男─バルドに男が報告をしていた。

「バルド、後部車両からの連絡が途絶えた」

「どう言うことだ?」

「……誰か乗ってやがる」

「バカな!
護衛は全員片付けたし外部への通信もおさえてある
乗客が助けを呼べるはずは……仲間が裏切りを?」

「まさか!」

「ふん、所詮はクズの寄せ集めだな
不足の事態が起こるとすぐに崩れる
そもそも貴様らの思い通りにはならんという事だ
今のうちに降伏することを考えておけ
下衆どもめ」

ハクロは自分が人質と言うのにも関わらず挑発する態度を取った。
刹那、撃ち抜かれる耳。

「…………っうあああああああ」

「無駄口たたくんじゃねぇ次は尻の穴増やすぞ」

放たれた弾はバルドの左腕の機械鎧からのもの。
その腕を振り上げると天井から人の走る音が聞こえ、そのまま銃を乱射する。



ドッガガガガガガガガガガ



「いってぇ!!」

『…………ったぁっ』

「アンっ!!」

撃つのをやめると人の声と屋根から降りる音が聞こえた。

「ネズミ2匹だ上を見てこい」









時はほんの数秒前に遡る。

『なんか聞こえない?』

「ん?」

『ドドドドって……』

バルドの乱射がだんだんと走るエドとアンに追い付いて来る。
それに気付いて慌ててスピードを上げる。

「いってぇ!!」

『…………ったぁっっ』

「アンっ!」

しかし、それにも関わらず掌に弾が貫通したアンはエドに引き寄せられ、横抱きにされる。

連結部に滑り込んだ2人。

「うわあぶねーあぶねー!!」

アンを降ろし、掌を見る。

「貫通してんじゃねーか!!大丈夫なのか!?」

『痛いけどへーき
あ〜あ最近怪我ばっかり
アイザックに刺されるし、ヨキに殴られるし、撃たれるし……どうしてこんなに怪我ばっかなのかな』

「たぶんアンがアホだから」

『うわっひどー』

「ほら止血するぞ」

アンの掌に布をあて、挟むように優しく錬成する。

「取り敢えず応急処置だ」

『ありがとう』

包帯を巻いたようになった手を見つめると、すぐに笑顔を見せた。
するとエドは顔を背け、ブーツを脱ぐ。

「ひゃーーーー。左足じゃなかったらやられてたな」

『生身の足だって考えるとゾッとするよね』

「機械鎧つけても2度と歩けなくなるかもな

きひょーー覚えてろよ」

機械鎧の足の隙間に挟まった鉛弾を取り出して、青筋を立てる。

『……取り敢えず別行動しますか、機関室奪還と人質救出』

「じゃあ俺は人……」

『いってきまぁす!』

「あっ!おい!……はぁ……必然的に俺は機関室奪還か……」

話を聞く耳を持たずにさっさと屋根の上に登っていったアンに呆れながらもエドは機関室奪還の為走り出した。









『とは言って人質救出に来たのはいいんだけど……入りたくないんだよね〜』

屋根の上に腕を組んで胡座をかきながら「う〜ん」と唸る。
時々強くなる風に吹き飛ばされそうになるのを踏ん張りながら首を捻る。

『人質救出するのはいいんだけど……その人質が将軍なんだよね

嫌いなんだよなぁ上層部の人間』

ひたすら「う〜ん」と悩むアンは物音に目を潜めた。











機関室では機関士を銃を持った男達が見張っていた。
張り詰めた空気の中転がり込んできた何か。

「鉛弾?」

「どこからそんな物……」

窓から逆さまのエドがニヤリと密かに笑う。



ばかん



「ぶ!!」

刹那、エドの足蹴りが後頭部に炸裂した。

「!!ヤロ……」

「うごっ!!?」

銃を構えようとするが機関士にスコップで頭を殴られてしまう。



べこ


どか


べし




もう1人の機関士も加わってスコップで男を殴った。
その様子をエドは呆然と眺めていた。

見事に男を倒した機関室達とエドは親指を立てあった。

「なんか手伝うことあるかー?」

「安全運転よろしく!よっ……と」

梯子を使い屋根の上に登ると長い漆黒の髪を風下に向かって靡かせながらアンが座っていた。

「おーい!アンなにしてんだー?」

『あっエド!!
実はね中この撃たれた穴から中を覗いて見たの、そしたらね中にいたのあたしの嫌いな将軍だったから入りたくなくって………』

「…………おまえなぁ……つうかなんでその穴を覗こうとするんだよ」

『好奇心だよ♪』

溜息を吐いていると、アンの背後から銃をもったジャック犯が出てきた。

「いたぜハツカネズミちゃん」

「アン後ろだっ!!」

『へっ?』

アンは振り向こうとしたが時既に遅く首元を捕まれ車両の中に落とされてしまった。

『うわっ!』

「1匹ゲット♪」

「アン!?この野郎!!」

車両の一部を大砲に錬成して問答無用で撃つ。

「どわーーっ!!」

それは男の頭の上を通過し、男はバランスを崩し車内へと落ちていった。

すると機関室の方から怒鳴る声が聞こえる。

「こりゃあ!!汽車の命の炭水車になんて事を!!」

「わ!ごめん!ん?炭水車……?」

咄嗟に謝ると頭の中で炭水車の断面図が描いた。
COAL、WATER……。
ゴンゴンと炭水車を軽く叩く。

「ふーん……」





















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