鋼の錬金術師

□第11話
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リゼンブールを出発し、中央にやって来た4人。
列車が駅に着いた途端にエドとアンは勢いよくホームへ飛び出した。

「早くしろよ、アル!」

『早く早く!!』

「兄さん、アン、そんなに急がなくても…………」

「うむ。図書館は逃げることはないぞ」

「『いいから早く!』」

早足で図書館へ向かおうとするエドとアン。
もう誰も2人の興奮をおさえらない笑顔で声を張り上げる。

「きたぜ」

『セントラル!!』

セントラルとはその名の通りアメストリスの中央。
主要施設やアメストリス1を誇る施設は勿論、人までもが集中する場所。
その中に賢者の石の手掛かりの潜む国立中央図書館もある。

そこへ軍服を着た男女がアームストロングにビシッと敬礼をする。

「アームストロング少佐、おむかえにあがりました」

「うむ。ご苦労ロス少尉、ブロッシュ軍曹」

ベリーショートで左目元の泣きぼくろが印象的な女性はマリア・ロス少尉。金髪の男性はデニーブロッシュ軍曹。
2人ともアームストロングの部下だ。

「おっ、こちらが鋼の錬金術師殿でありますか」

2人が声をかけるのは、弟のアルフォンス・エルリックの方。

「マリア・ロスです。お会いできて光栄です!」

「デニー・ブロッシュです。いやぁ、ふたつ名通りの出で立ち!貫禄ですな!」

鋼の錬金術師本人であるエドはショックに顔を歪ませている。
その横でアンは腹を抱えて笑う。

アルとアームストロングは間違いを指摘する様にエドを指差す。
幼馴染は未だに彼の隣で腹を抱えて笑っている。

「え?」

「あっちのちっこいの?」

ちっこいに反応し、きーきーと騒ぐエドをアームストロングがフードを掴んで持ち上げている為、彼は動く事が出来ない。

「こっ……これは失礼しました!!」

「ちっこいだなどと、いえその…………ごにょごにょ」

エドの剣幕で2人は慌てて謝った。

「では我輩はこのまま中央司令部に報告に赴くゆえ」

「え?何?ここでお別れ?おつかれさん。残念だなぁバイバイ!!」

寂しそうな言い方とは反対に表情はとても嬉しそうに言う。
するとアームストロングは涙を流しながらエドを思い切り抱きしめる。

「我輩も残念だ!!まっこと楽しい旅であったぞ!!また後ほど会おう!!」

「うおーん!!」

『エドぉお!?』

エドから骨の折れる嫌な音が聞こえて来た。
彼はアームストロングにコートを掴まれ、口からは魂が出ていこうとしている。

『えぇ!?エドぉおおお!!』

アンはそんなエドを揺さぶった。

「あとはまかせた!」

「「はっ!」」

2人は声を揃えて敬礼をする。

やっとアームストロングから解放されたと思ったが、またもや護衛。
エドとアンは不満に顔を歪ました。

『えーー?』

「まだ護衛つけなきゃならないのかよーーー」

「当然である!」

キッパリと言い切るアームストロング。

そこでアンは思い出した様に足を止めた。

「アンどうした?早くいこーぜ」

『2人とも先に行ってて。あたしこれ提出して来るから』

「書類であれば我輩が持っていこうか?」

『頼みたいけどこの書類直接渡さなきゃ駄目だから、自分で行くよ』

「…………」

書類の封筒を抱えるアンを不安そうに見詰める。
そんなエドの視線に気が付いたのかアンは心配させないように笑った。

『へへ。大丈夫だよ、すぐに行くから!図書館で待ち合わせね!』

車に向かいながらでロスが説明する。

「東方司令部の報告によるとスカーもまだ捕まっていないそうですし、事態が落ち着くまで私達が護衛を引き受ける事になっています
少佐ほど頼りにならないかもしれませんが、腕には自信がありますので安心してください」

車に乗り込む幼馴染を見送ったアンは、アームストロングと共に中央司令部へと向かった。

車の中はエドとアルの向かいに護衛の2人。

「しょーがないなぁ……」

「「よろしくお願いします」だろ兄さん」

護衛が気に入らないエドの態度にアルが注意した。

「兄……!?ええと、この鎧の方は弟さん……?」

「それにしても何故鎧のお姿で………?」

ブロッシュにとっては何気ない疑問。
しかし2人にとっては答えにくい質問。
2人は顔を見合わせ、声を揃えた。

「「趣味で」」

理解し難い答えにロスとブロッシュは顔を見合わせて、ヒソヒソと小声で話す。

「趣味って!?少尉殿。趣味って何でありますか?」

「わかんないわ、この子達!!」

何とか、紛らわそうと2人は窓の外を見てわざとらしく声を上げる。

「いい景色だなぁ〜!!」

「都会って感じだね!!」

そこでブロッシュはまたしても疑問を投げ掛ける。

「あの少佐と一緒に行かれた女の子はどなたですか?」

「ぶっ!あいつが女の子だってよ!!」

腹を抱えて笑うエドの代わりに、アルが答える。

「"雪の錬金術師"のアン・ケリーですよ。中佐もやってるからわかると思うんですけど、知りませんか?
僕達の幼馴染で一緒に旅をしているんです」

「あの子がですか!?」

「はい」

「へぇ……それにしても、すごいですよね。大人でも手をあげる資料を完璧に提出してくるんですよ」

「確かに私も一度拝見させていただきましたが、とてもあの子が書いたようには思えない出来でした……」

失礼な事を言ってしまったと、慌てて口許に手を当てる。

「そんなに身構えなくてもいーよ。あいつはそんな事、ちっとも気にしねーやつだ」

そう言ってエドが笑うと、ロスは安心した様に胸をなで下ろした。

少しすると見えてきた図書館。

「あれが国内最大の蔵書量を誇る国立中央図書館です。全蔵書を読みきるには人生を百回繰り返してもらまだ足りないと言われている程です
そしてその西隣に位置するのがお二方の目的とする第一分館。ここには様々な研究資料や、過去の記録各種名簿などが収められて……いるの…………ですが……」

ロスは言葉を濁らせた。

「つい先日の不審火によって、中の蔵書ごと全焼してしまいました」

彼等が目にしたものは焼けて跡形もなくなり、炭と化した第一分館。2人は言葉を失った。










扉をノックをすると、低い威厳のある声が聞こえてくる。

「入りたまえ」

扉を開いて中に入る。
部屋の奥に眼帯をつけた男─大総統のキング・ブラッドレイが机に肘を付き、無表情で座っていた。

「久しぶりだな」

大総統の挨拶を無視して彼の座っている机まで行くと、ドンと資料の入った封筒をそこに叩きつけるように置いた。

『仕事』

「…………うむ」

資料を手にパラパラと捲ると、やっと表情を変え、満足そうにニコリと笑う。

「よろしい」

そして机の引き出しから封筒を取り出し、アンに差し出した。

「次の仕事だ。暫くここにいるのだろう?すぐに提出したまえ」

『…………』

奪うようにそれを受け取り、アンは踵を返した。












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