鋼の錬金術師

□第18話
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「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡ステキ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♡」

1人の女性が目を輝かせて頬に両手を添えながら、ショーウィンドウの中の豪華な指輪を眺めていた。

「この指輪、レミス工房のニューモデルよぉ!まさかこんな街でお目にかかれるなんて〜〜〜〜♡ねぇ、買って、買ってぇ〜〜〜〜〜ん♡」

「はっはっは。いいとも、ハニー♡」

女性は隣の男にねだると、彼は快く了承を出した。

そして先の女性と同じく、目を輝かせて頬に両手を添えたウィンリィがショーウィンドウを眺めている。

「キャ〜〜〜〜♡ステキ〜〜〜〜〜〜〜♡」

視線の先には豪華な箱に入れられた機械鎧。

「この機械鎧!!ゴッズの11年モデル!!まさかこの目で拝める日が来るなんてぇ〜〜〜〜〜♡」

その様子を呆れた目で見るエドとアンとアルの3人。

「……何?」

「いや………なんでもない…」

『うん、楽しそうで何よりだなぁって』

南部の暑さは相当なもので、エド達はそれぞれに体温調節をしていた。

ウィンリィは上着を脱いで手に持っており、彼女の荷物はアルが持っている。

アンは上着を脱いで、カーキー色のブラウスの袖を捲っている。

エドはコートも上着も脱いで、機械鎧が剥き出しの状態。

「ラッシュバレー!!「にわか景気の谷」の名の通り、イシュヴァールの内乱があった時に、義肢技術を発達させて急速に大きくなった街よ。「機械鎧義肢の聖地(メッカ)」とも言われてるわね」

「本当だ、機械鎧だらけだね」

活気溢れるラッシュバレーの街の大通りには、あちこちに機械鎧専門店が建ち並んでいて、街の人々がアルを物珍しそうな目で見る。

「おっ、全身機械鎧」

「すげぇ」

「未だに国内のあちこちで、戦火が上がってるから、義肢の需要は多いみたいね。本当は、こんな商売が繁盛しない世の中になればいいんだけど…」

すると騒がしい歓声が聞こえ、視線を向けると、何やら大きな人集りが出来ていた。

「すげー!51連勝!!」

「勝てねーよ、あんなの!!」

その中心には両腕に機械鎧を装着した強そうな大男が、座っている。

そして彼の隣に立つ司会者が声を張り上げて言う。

「マシン・アーム・レスリング!!機械鎧装備者限定の腕相撲だよ!賭け金1万センズでこいつに勝てたら、テーブルの上の賭け金の山は全部持ってけ泥棒だぁ!!」

「よっしゃ!俺がやる!」

エドの後ろから、1人の男が名乗り出た。

「へへっ、今日、新品にしたばっかでね。性能を試してみたかったんだ」

「おっ!いいねお兄さん、ノリノリだね!!」

2人は机に肘を付き、ガシッと手を掴む。

「そんじゃ、レディ、ファイッ!!」

司会者の合図と共に、大男は挑戦者の機械鎧を机に叩きつけた。

「新品つったっけか?」

唖然とする挑戦者の腕に先程まで装備されていた機械鎧は引きちぎられており、大男の手からぶら下がっている。

「悪ィな、廃品回収に出しといてやるよ」

「そんなぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」

「壊れた!」

「腕、壊れたね!?」

涙を流して嘆く挑戦者の周りに、一斉に飛び掛るように機械鎧技師達が集まる。

「腕を作るならうちで!!」

「いや、うちで!!」

「サービスするぜ、お兄さん!!」

彼等は男を胴上げすると、その場から駆けて行く。

「見積もりはこれ位で!!」

「分割オッケイよ!!」

「足りなきゃ、働いて返してね!!」

「たすけて〜〜まだローンが残ってるのに〜〜」

「ハイエナのようだ…」

『目が光ってるよ、あの人達』

「さあて次は…おおっと、そこのでかくて、強そうなお兄さん!どうだい、ひと勝負!」

「ボク!?ダメダメ!やりません!!」

司会者は全力で断るアルから、エドにへと視線を下げる。

「そんじゃあ、こっちの右腕が機械鎧こ…おう失礼!こんな豆坊ちゃんじゃ、元から勝負にならないね!!」

そう言って額を叩いた司会者。
それがエドの禁句ワード等知る由もなく、観客は大笑いしている。勿論、その中の1人にアンも含まれていた。

『あはははは!ま、豆坊ちゃんって!!』

「さぁ、誰かいないか、誰か!?」

アルとウィンリィは一瞬にして青ざめた。

そして青筋を幾つも建てたエドが、両手を勢いよく机に叩きつけた。片方の手には1万センズのお札。

「…おほっ!?やる気だよ、この坊ちゃん」

「おもしれぇ!!」

「ちょっとエド!いくらなんでも、勝てる訳ないでしょ」

ウィンリィが抗議の声を上げる中、ある事に気が付いたアルは声を漏らし、アンもニヤリと笑う。

「あ」

「リーチもパワーも違いすぎだぁ」

「こりゃ、肩ごと持ってかれるぞ」

体格が違いすぎる2人の勝負に、観客達からは笑いが巻き起こり、

「整備師スタンバイ!!」

「Yaー!!」

エドの負けを確信した機械鎧技師達は、彼の横にスタンバイをする。

『頑張れー!!豆粒坊ちゃん!!』

「レディ!!」

2人は机に肘を付け、手を掴む。

「ファイッ」

司会者の合図と共にエドは大男の機械鎧を机に叩きつけた。

その勢いで、大男の機械鎧は無惨に壊れる。

周りの観客もウィンリィもただ呆然と目を見開く。

アルは腰に手を当て溜息をつき、アンは笑う。

「…はい?」

「悪ィね。今日は廃品回収が大忙しだ」

エドの勝利宣言に歓声が沸き立つ。

「壊れた!!」

「腕、壊れたね!?」

大男を囲む機械鎧技師達は、獲物に群がるハイエナそのもの。

「腕を作るなら、うちで!!」

「いや、うちで!!」

「サービスしまっせ!!」

「ぎゃーー、いやーーー」

「はっはっはっ、ユカイ、ユカイ」

『あははっ』

見事に勝利を勝ち取ったエドは、偉そうに椅子にふんぞり返り、日の丸の扇子を広げていた。

試合の勝敗の原因をウィンリィはアルに耳打ちで訊ねる。

「何やったの?」

「錬金術で、相手の腕をもろい物質に作り替えたの」

勝負を始める少し前、


「勝てる訳ないでしょ!!」

ウィンリィの抗議の声が上がる中、エドは机の下で両手を合わせた。

「あ」




「ずるーい」

「うわははは、聞こえんなぁ!!」

「(悪…)」

弟は、悪知恵の働く兄に対して、呆れを込めて胸中呟いた。

すると、先程の活躍ぶりが目に止まったのか1人の機械鎧技師が声を掛けて来た。

「君!ここらじゃ見ない形の機械鎧だね」

「おお本当だ。見てごらん、この造り」

「え」

「あたし、あたし」

「へぇ、お嬢ちゃんが製作者?いい仕事してるねぇ」

そしてあっという間に4人は、機械鎧技師達に囲まれた。

「東部の?ほほう、どうりで珍しい型だと思った」

「あの、おい、ちょっと」

「なるほど、ここにシリンダーを」

「え?左足も機械鎧?」

「おーい」

「見せろ見せろ!!」

「足出せ!」

「面倒くせぇな。ズボン脱げや、小僧!!」

「ぎゃーー、いやーーー」

街の大通りで問答無用に服を脱がされるエドの悲鳴が響いた。














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