中編

□旅立ち
1ページ/6ページ

そこはイッシュ地方の北東部にある小さな町、カゴメタウン。
その町にある一軒の家、そこから全ては始まる……。


朝、この家に住むルーシェは自室のベッドで目を覚ました。
服を着替え、乱れた髪を直し、そしてまだ枕元で眠っている相棒に声を掛ける。

「おはようティナ、朝よ?」

まだ眠いのか目を擦りながら起きたのは、イッシュ地方に伝わる伝説のポケモンであるビクティニ。
ティナと呼ばれたビクティニは目の前にいるルーシェを見つけると、その頭に飛び乗る。

「今日も良い日だといいね」
「ティニ!」

二人は自室を出てリビングへと向かう。
そこにはキッチンで朝ごはんを作る母親と、椅子に座りテレビを見ている父親がいた。

「おはよう、お父さん、お母さん」

挨拶をすれば、両親も笑顔で返してくる。

「イーブイもおはよう」
「ブイ……」

足元でポケモンフーズを食べるイーブイの頭を撫でてからルーシェが椅子に座ると、母親がテーブルにトーストとハムエッグの乗った皿を並べていく。

「いただきます」

朝ごはんを食べ始めるルーシェ、その足元でティナもポケモンフーズを食べている。
トーストを食べながら父親が見るテレビに目をやると、ホウエン地方のキンセツシティという大きな街の特集をしていた。

「ホウエン地方か……」
「行きたいのか?」
「気になっただけ」

キンセツシティはホウエン地方一の都会だと紹介していたので少し気になった。
しかしホウエン地方はイッシュ地方からもかなり距離がある、簡単には行けない。

「お前も旅に出たらどうなんだ?」

父親にそう言われたが、ルーシェは黙々とトーストを食べ続ける。


十歳になり初めてポケモンを手にしてから六年が経ったが、ルーシェは旅に出たことがなかった。
と言うのも、彼女の家系は代々サイキッカーと呼ばれる超能力者で、超能力の特訓等をしていたりと旅に出る暇もなかった。
その超能力で、自分の手持ちのポケモンとならテレパシーで会話もできる。
両親はもう一人前だと思っている為旅に出るよう勧めるが、本人はそうは思っておらず毎日特訓に励んでいた。
なので今日もこの後、超能力の特訓をする予定であった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ