中編
□旅立ち
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「ブイ……」
すると少し開いた扉の隙間からイーブイが入ってきた。
このイーブイもルーシェのポケモンだが、何に進化するかによって名前を決める予定であった為まだ名前を付けていない。
十二歳の誕生日に貰ったタマゴから孵し、ルーシェにとても懐いている。
「どうしたの?イーブイ」
イーブイはリュックを見つけると、何も言わずにその中へ飛び込む。
「イーブイ!こら、ダメでしょ?」
ルーシェはイーブイをそこから出そうとしたが、イーブイは嫌がって出ようとしない。
それを見ていた母親が笑って言う。
「もしかして、自分が置いていかれると思ってるんじゃない?一緒に行きたいのよ」
「そうなの?」
そうだと言うようにイーブイは小さく鳴いた。
ルーシェはイーブイを抱き上げる。
「大丈夫よ、イーブイ。後であなたに聞く予定だったの、一緒に行きたいか。もし行きたくないなら、ここに残すつもりで……」
[置いていくなよルーシェ!]
ここに残すと言うとイーブイは足をバタバタさせ、テレパシーでかなり怒っていることを伝える。
「ごめんごめん!イーブイ、一緒に来てくれる?」
[当たり前だ!]
[三人で行こー!]
相棒のティナもイーブイが一緒に来るので嬉しそうだ。
ルーシェは二匹のモンスターボールと共に、空のボールを幾つかリュックに入れる。
この先、他の地方でポケモンを捕まえるだろうと思って……。
そんなルーシェ達の姿を見て、母親も嬉しそうに微笑んでいた。
その日の夜、ルーシェはホウエン地方にいる親戚のルージュに電話をしていた。
ルージュに旅に出る話をし、まずはシンオウ地方へ向かうことを告げる。
『そうか、ルーシェも旅に……』
「うん、貰った写真の所に行きたいの。だからシンオウ地方にまず行って、その後はまた考えるつもり」
『なるほど……もしホウエン地方に来る時は連絡してくれ、迎えに行く』
そう話して電話を切る。
時計を見れば十一時過ぎ、明日は朝早く出発する予定なので今日はもう寝ようと思う。
ライトを消しベッドに横になり、枕元で眠るティナとイーブイに言った。
「おやすみ……一緒に、頑張ろうね」